脊椎動物の内耳は外胚葉性上皮の肥厚である耳プラコードから形成される。本研究では、この耳プラコードがどのように形成されるのか、その過程におけるNotchシグナルの機能と関連遺伝子の発現動態、そして耳プラコード前駆細胞の動態を関連付けることによって理解することを目的とした。 結果1:耳プラコードが形成される領域の外胚葉性上皮においてNotchリガンドのDelta1とNotchシグナル下流因子Hes5-2が“ゴマシオ”状に一過的に発現し、かつその発現領域が胚の前方から後方にシフトするというダイナミックなパターンを観察した。 結果2: Sox9遺伝子の耳プラコード前駆細胞特異的エンハンサーに膜結合型やアクチン結合型GFP遺伝子をつないだレポーターを作成し、培養ウズラ胚の予定耳プラコード領域に導入して細胞の動態をタイムラプス観察したところ、GFP陽性細胞が一般的な上皮細胞には見られないような葉状突起類似構造を伸ばしていることを発見した。 結果3:Sox9エンハンサーGFPレポーター遺伝子の発現を指標とした長時間タイムラプスにより、耳プラコード前駆細胞がお互いに集まるような方向に移動することがわかった。 考察:Notchシグナルによって予定耳プラコード領域の外胚葉上皮細胞の分化運命が制御されているというこれまでの結果も加味すると、一過的なNotchシグナルの前方から後方の波とともにDelta1陽性細胞が耳プラコード前駆細胞として分化し、その後葉状突起を伸展して上皮内を移動、集合して耳プラコードを形成すると考えられた。
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