公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
発生初期には多くの細胞が目的の位置に移動する現象が頻繁に見られる。細胞移動にはNetrin, Slit, Semaphorinなどの分子がガイダンスキューとして働き、細胞の移動を制御している。こうした分子の細胞内シグナル伝達系として、これまでの好酸球やfibroblastなどを用いたin vitroの培養細胞系の研究から、細胞内Ca2+の変化が深くかかわっていることが示されている。しかし、細胞移動とその秩序の分子制御メカニズムについては十分には解明されていない。我々はこれまで独自に開発した蛍光Ca2+プローブG-CaMPを用いて、発生初期の背側中胚葉(DMZ)の細胞が次に移動する方向を非常に高い確率で予測できることを見出した。本研究は、初期発生のin vivoでの細胞の移動に関して、Ca2+濃度の動揺と細胞移動に関連する分子を研究し、細胞の移動の秩序とそのメカニズムを明らかにすることを目的としている。今年度は主にゼブラフィッシュの初期胚を用い、初期発生中に起こる細胞移動に関して、G-CaMPを用いてカルシウムイメージングを行い、細胞移動とカルシウム動態との関係を解析した。その結果、ゼブラフィッシュの初期胚においても、細胞移動とカルシウム濃度とには関連があり、細胞内カルシウム濃度が高い細胞ほど移動が活発であることが明らかになった。本研究の成果により細胞移動を分子レベルで制御可能になれば、がんの転移を抑制するといった研究に発展する可能性がある。また将来的に再生医療における細胞の秩序だった再生に応用・発展する可能性がある。
2: おおむね順調に進展している
初期発生中の胚に蛍光カルシウムセンサーであるG-CaMPを発現させ、初期発生中に起こる細胞移動とカルシウム動態をレーザー顕微鏡を同時に観察が可能で、細胞移動とカルシウムについて解析を行っている。
H25年度で行った初期発生中の胚に蛍光カルシウムセンサーであるG-CaMPを発現させ、初期発生中に起こる細胞移動とカルシウム動態をもとにして、H26年度ではゼブラフィッシュのDMZの細胞を用いて、細胞移動とカルシウムシグナルの関係をより詳細に解析する。薬理学的解析、caged化合物を用いた光操作を行い、細胞移動とCa2+の関係を詳しく調べる。また、細胞移動に関連する分子を分子レベルで操作し、関連する分子を特定するとともに、細胞内Ca2+の変動と細胞移動およびその秩序の分子制御メカニズムを明らかにする。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (13件) (うち招待講演 2件) 図書 (2件) 備考 (1件)
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http://subsi.saitama-u.ac.jp/