粘菌細胞の集合は、静的なcAMP勾配ではなく、cAMPの動的な進行波への誘引によって引き起こされている。細胞が受ける空間的な勾配は常に一定ではなく、波が細胞を通過するごとに勾配の方向が反転してしまう。空間勾配を検知するだけでは、繰り返し反転する場に対して細胞は行ったり来たりしてしまい、一方向に進むことが難しいはずと考えられている。昨年度までの解析により、我々は、微小流路を用いて進行波刺激を再現する系を構築し、3分から10分で通過するcAMP波に対してのみ、波がやってくる方向へ一方向移動し、このことが濃度の時間変化が減少である際がフィルターアウトされる特性に由来していることを明らかにした。今年度は、この問題を引き継ぐかたちで、粘菌の集合ステージの後期における運動に注目し、これまでに明らかにしてきたフィルター特性では説明つかないことを明らかにした。とくに、細胞間接着の様式の重要性に着目し、微小流路系の勾配チャンバーの改良を進め、細胞の極性形成とその維持に関わる動態について詳しく解析した。
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