研究領域 | 動く細胞と場のクロストークによる秩序の生成 |
研究課題/領域番号 |
25111706
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐藤 直樹 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (40154075)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 自己組織化 / 細胞運動 / 緑藻 |
研究概要 |
「研究目的」本研究では,光合成を行う運動性細胞が,重力や光などの環境から与えられる場に応答して秩序構造(生物対流)を作り上げる仕組みを研究することを目的とする。本研究では,クラミドモナスが示す生物対流のうちでも,特に開始過程に注目する。側面観察顕微鏡による観察結果を解析することにより,実際の細胞のダイナミクスを記載するという方法論をとる。さらに,蛍光ラベルした細胞を指標として,詳しい細胞の挙動を調べる。細胞間相互作用も重要な役割をもつと推定しており,細胞間相互作用にかかわる遺伝子の改変を目指して,クラミドモナスの形質転換系を使えるものにしてゆくことも,本年度の目標とした。 「本年度の成果」 1.クラミドモナスの生物対流開始過程の解析(1)倒立対流系を用いた細胞集積と吹き出し形成の観察:Percoll中で下から光を当てることで細胞を下に集め,そこからの細胞の吹き出しを見る「倒立対流」の系を利用し,側面観察型顕微鏡を用いて,個々の細胞の動きを詳細に記録した。密集細胞層の表面は,最初は,均一に上昇したが,途中から,不均一になり,やがて吹き出しを形成した。細胞が集まる速度は,光強度には依存せず,細胞密度だけに比例した。しかし,吹き出し形成は,光が弱く細胞密度が高いときに起こりやすくなった。また,細胞層表層では,細胞の不安定な動きが見られた。細胞層内部では,遊泳はしないものの,光に依存した細胞の運動があると考えられた。(2)密集細胞層の内部での細胞運動の観察:蛍光試薬で標識した細胞を少量まぜて,密集した細胞層の中での個々の細胞の動きを記録した。まだ十分な観察はできていないが,非常に複雑な運動をしていることがわかってきた。 2.変異株の構築にむけて:遺伝子導入装置を購入し,困難と言われてきたGFPが光る株を得ることができた。これからの研究に道がひらけた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では,多数の細胞が密集して運動するときに形成される生物対流の形成過程を,側面観察型顕微鏡により観察・記録し,その画像を元にして,密集細胞の吹き出しが生ずる過程を詳細に解析することを目的としていた。この点については,特に大きな問題なく,多くの実験の積み重ねにより,統計的に意味のあるデータを作ることができたと考えている。 次年度に向けての準備として,運動の変異体などを取得するということがあったが,これに関しては,細胞の形質転換ができるようになり,これから順調に進むと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
クラミドモナスの形質転換ができるようになったので,蛍光ラベルした細胞を少量まぜることにより,密集細胞集団内での個々の細胞の動きを高感度でトレースできるようになった。このシステムを使って,細胞運動の詳細な解析を進める。また,運動特性の異なる株を使った実験も進める。これらにより,従来詳しく研究されて子なっかった密集細胞層内での細胞運動の動態を明らかにし,さらに,生物対流開始機構の理解を深めることができる。
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