研究領域 | 動く細胞と場のクロストークによる秩序の生成 |
研究課題/領域番号 |
25111711
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
長山 和亮 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10359763)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | バイオメカニクス / 生体・情報計測 / 細胞核 / 細胞骨格 / メカノトランスダクション |
研究概要 |
研究初年度は,細胞接着斑,細胞骨格,核といった細胞内構成要素の空間配置を詳細に観察しながら,各要素間の力学的な相互作用や細胞内の張力分布を解析するための実験系を構築した.すなわち,現有するニポウ式リアルタイム共焦点スキャナに,本年度科研費にて新たに顕微鏡用のマルチ光源を設け,高速で多色蛍光観察ができるようにした.次に,細胞接着斑に生じる力の分布様態を把握するため,これまでに確立してきた弾性マイクロピラーによる接着斑での張力計測法を適用し,引張りや圧縮といった動的な力学環境下での細胞運動時の張力分布を詳細に解析できるようにした.これらの実験系を用いて,特に繰り返し引張ひずみやステップひずみを加えたときの細胞運動の変化を解析したところ,ひずみ負荷の回数によって,細胞の収縮運動と伸展・移動運動が切り替わっている可能性が得られた. また,微細加工技術で作成したマイクロ流路などを用いて,細胞の初期形態を制御したり,細胞の運動領域を制限する技術を確立し,そのような環境下での細胞接着斑・細胞骨格・核の空間分布や力学的相互作用を詳細に解析できる実験系を確立した.細胞形態が細長くなると,アクチン細胞骨格と細胞核との配向が均一化し,両者の力学的な結合が向上して細胞の運動性が低下する.逆に細胞が広がった状態では両者の配向の相関が低下し,かつ両者の力学的結合状態が緩み,細胞の運動性が高まるといった可能性が得られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,細胞接着斑,細胞骨格,核の3次元的な形態・配置の経時的な変化を詳細に把握するとともに,これらの力学的な相互作用を明らかにするための実験系が構築できた.さらに,単に静的な環境だけでなく,引張りや圧縮といった力学刺激を加えながら,細胞挙動とその張力分布をリアルタイムで観察できるように工夫が成された.これらに加えて,微細加工技術で作成したマイクロ流路などを用いて,細胞の初期形態を制御したり,細胞の運動領域を制限する技術を確立した.そして,実際にそのような環境下での細胞内構造の変化を詳細解析することで,アクチン細胞骨格と細胞核との力学的相互作用の変化が細胞運動の秩序形成に大きく関与している可能性が得られた.以上の理由から,本研究が概ね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
前年度に確立した実験系を活用して,単一細胞レベルでの細胞内構成要素の力学的協調性が,どのようにして「細胞群」としての運動に影響を与え,細胞全体の協調性を生み出すのか見極める.特に基質の弾性率分布や基質表面の微細構造といった静的力学場や,引張りや圧縮,流体せん断といった動的力学場の変化が,細胞接着斑とアクチン細胞骨格との配向や細胞核との力学的結合状態にどのような影響を与えるのか,リアルタイム観察で明らかにしていく.そして,細胞内の個々の構造体の力学的な相互作用が,個々の細胞や細胞群・組織レベルの細胞運動にどのような影響を与えるのか明らかにしていく.
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