本研究課題は下記項目について、実験的構築と集団動態解析を行った。 ①分化する大腸菌株の作製:LacIとTetRを導入した二重フィードバック制御を大腸菌のゲノム上に組み込んだ。この遺伝子回路により、過去に異なるシグナルを受けた細胞が同じ環境下に置かれたとしても異なる表現型を示せた。つまり、同一遺伝子型において、表現型の多様性を作り出し、個々の胞の確率な表現型の変化を模倣できた。また、集団形成させるために、アミノ酸栄養要求性を相互作用として用いた。大腸菌生存に必要な二種類の栄養素によって相互作用を作り出した。関連する遺伝子の発現量と相互作用の強さをリンクさせ、機能的に分化した二種類細胞の共存が可能であることを示した。 ②集団構成の安定性の検討:確率的表現型の変化が認められたため、栄養漏れ出しによる細胞間相互作用の調整を行った。栄養の合成に直接に関わる大腸菌の遺伝子型を改良し、分化する大腸菌の遺伝子型の種類を増やした。複数大腸菌株に対し、フローサイトメトリーを用いて、液体培養下での確率的分化と集団形成を時間方向で評価した。大腸菌株の遺伝子型の違いによって、相互作用の種類と強さが変わることが確認できた。 ③安定な集団形成を達成するための定量的解析:確率的な集団分布の形成と定常分布までの遷移過程(タイムスケール)を観測した。細胞表現型ごとの増殖速度、各栄養の漏れ出し率など各パラメータを見積るための条件検討を行った。
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