公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
哺乳類の腎臓発生はウォルフ管から1本の尿管芽が誘導されることによって開始する。正常な尿管芽形成には、ウォルフ管と後腎間葉との適切な上皮-間葉相互作用が必須である。受容体型チロシンキナーゼRor2はWnt5a受容体として細胞の極性形成や移動、がんの浸潤・転移などにおいて重要な役割を担っている。Ror2 欠損マウスおよびWnt5a欠損マウスが重複腎・尿管奇形を呈することから、本研究ではこれらのマウス胚の尿管芽形成に着目し解析を行った。尿管芽を可視化するため、ウォルフ管と尿管芽でGFPを発現するマウスを用い、腎臓原基の器官培養によって尿管芽形成の過程をライブイメージングによって解析した。その結果、Ror2欠損マウスおよびWnt5a欠損マウス共に、尿管芽が出来はじめる胎生10.5日目において既に異常な形態の尿管芽が認められ、その後、2本の尿管芽を形成した。それらの尿管芽の成長は野性型の尿管芽の成長に比べて遅く、さらに、Wnt5a欠損マウスにおいては全く尿管芽が伸長しない場合が約半数認められた。Ror2の発現は後腎間葉に特異的であったことから、尿管芽形成過程における後腎間葉の配置を免疫染色によって解析した。野性型マウス胚では、後腎間葉がウォルフ管の後端付近で腹側から背側にねじれるように配置し、尿管芽の伸長と共に後腎間葉もより背側に配置した。一方、両欠損マウス胚の後腎間葉は主にウォルフ管の腹側に配置し、背側への配置はほとんど認められなかった。これらの結果からWnt5a-Ror2シグナルは後腎間葉の配置を制御することによって、適切な上皮―間葉相互作用による尿管芽形成に重要な役割を担っていることが示唆された。現在、後腎間葉でGFPを発現するSix2-GFPマウスや光刺激で緑から赤に蛍光が変わるKaedeマウス等を用いて、後腎間葉の細胞移動について解析を行っている。
2: おおむね順調に進展している
腎臓の発生段階に応じた後腎間葉の配置の変化を明らかにし、それがWnt5aやRor2の遺伝子欠損マウス胚において異常になっていることを見出すことができ、この結果を基に各種蛍光レポーターマウスを用いた後腎間葉の細胞移動解析に進むことができた。
後腎間葉の細胞移動をライブイメージング解析することで、Wnt5a-Ror2シグナルがどのように後腎間葉の配置を制御しているのかを明らかにする。そのために、後腎間葉でGFPを発現するSix2-GFPマウスを用いているが、解析に用いる発生ステージ(胎生10.5日目)ではGFPの蛍光強度が予想以上に弱かったことから、より感度の高いレポーターマウスを検討する必要がある。そのため、Wt1-CreERT2マウスとR26R-H2B-mCherryの交配によって後腎間葉細胞の核で赤色蛍光タンパク質mCherryを発現するマウスを作成する予定である。また、KaedeマウスとHoxB7-EGFPマウスの交配によって、ウォルフ管と尿管芽を同定しながら、任意の場所を緑から赤に変えることができたため、このマウス胚の培養腎臓において尿管芽周辺の細胞移動について解析を行う。
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