公募研究
鳥類の始原生殖細胞が、一時的に血液内を移動したのち血管壁を通過して遠隔に転移する現象に着目し、その移動メカニズムの解明を目指して研究を行った。初年度は特に、始原生殖細胞が特定の毛細血管領域において循環移動を停止するメカニズムを明らかにすることを目的とした。蛍光標識を施した血管内の始原生殖細胞の動きをライブイメージング観察したところ、始原生殖細胞が毛細血管に挟まる(つまる)様を捉えた。他の血球細胞などは挟まらずに細胞形態を柔軟に変化させて通過していくことから、始原生殖細胞が硬いのではないかと予想した。つまり、始原生殖細胞の転移能は細胞弾性に依存しているのではないかと仮説を立てた。実際に始原生殖細胞の弾性を原子間力顕微鏡にて実測したところ、PGCは血球にくらべて2~8倍高弾性であることが分かった(約800Pa)。
2: おおむね順調に進展している
始原生殖細胞の循環移動停止において、3つの興味深い細胞挙動を捉えている。始原生殖細胞が血管壁に挟まる(当該年度報告)メカニズムを初年度に、その他の2つ(始原生殖細胞と血管には特異的な親和性がある、および始原生殖細胞は血球細胞と血栓様の細胞塊を形成する)を次年度に解析する予定であったが、当該年度は残すところ始原生殖細胞における高細胞弾性の実体解明を残すのみとなっている。また、他の2つの細胞挙動・機能解析についても準備が進んでいることを考え合わせ、研究はおおむね順調に進んでいると判断している。
当該年度の結果をうけ、今後は始原生殖細胞における高細胞弾性の実体解明をを行う。また、高弾性が血行性転移を行うに十分なファクターであるかについて明らかにするために、人工合成生体ゲルを用いた転移アッセイを行い、ここまでの成果を論文発表する。始原生殖細胞と血管内皮細胞および血球細胞との特異的接着機構を明らかにするために、始原生殖細胞で発現する接着因子(タンパク質)および糖鎖の機能解析を行う。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
PLoS One
巻: 10 ページ: e0116119
10.1371/journal.pone.0116119.
Proc. Natl. Acad. Sci. USA
巻: 111 ページ: 6660-6665
doi: 10.1073/pnas.1316728111.
http://www.biology.tohoku.ac.jp/lab-www/tamlab/index.html