実施計画に従いクラスターシステムを設置した。本クラスターシステムは1ノードに64コアを持ちそれを3台用意することで、個人で使用するにはきわめて強力なマシンパワーを持つものとなった。本クラスターシステムを使い、平面接着基盤上を動く細胞のシミュレーションを実施した。これまでマシンパワー不足で計算できなかった計算を行うことにより、さまざまな結果を得ることができた。シミュレーションにおける細胞には接着パラメータが設定されている。接着パラメータの大きくすると、細胞は基盤上に強く結合する。小さくすると基盤による制限は小さくなる。このパラメータが細胞の運動パターンに大きな変化を及ぼすことが確認された。Takagi et al. 2008 における野生型細胞性粘菌(5.5時間飢餓処理後)の運動データと比較をおこなったところ、接着パラメータが小さくすることがこのデータに近い運動パターンを生成することの必要条件であることがわかった。(ただし十分条件ではない)逆に 細胞性粘菌 amB(-)変異体や fish epidermal keratocyte によく似た、三日月型のパターンは接着力をより大きくすることが必要条件であった。残念ながらamiB(-)変異体や keratocyte より細胞性粘菌野生株の方が接着力が弱いという知見は私の知る限り公的な場では発表されていない。しかしながら、今後の実験によって確かめることができるだろう。 本研究は次年度においてもさらに発展させる計画だったが、研究職の任期満了によりやむなく辞退へと至った。不可抗力とはいえ、次年度に続けることができず自身の不覚のいたすところとしか言いようがなく、本研究をサポートしていただいた方々に申し訳なく、いつかこの研究の発展があることを、それがたとえ私自身によるものではないとしても、望みたい。
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