公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
本研究では肺組織内での細胞の動き・ゆらぎと細胞間相互作用の形成による炎症巣の場の決定メカニズムを解明することを目的として、独自に開発したマウス肺内in vivo live imagingシステムを用いて解析を行い、今年度に以下の結果を得た。1.Th2細胞の集積とfocus形成を制御する因子の同定:OVA特異的Th2細胞を移入し、気道炎症誘導前後に接着分子やケモカインに対する抗体を投与してTh2細胞集積やfocus形成に対する効果を調べた。その結果、CD69に対する抗体を投与しておくとTh2細胞集積やfocus形成が抑制されることが明らかとなった。また劇症型急性肺炎モデルでは気道炎症モデルでの細胞集積とは異なる分子が関与していることが明らかとなった。2.マウス肺内in vivo live imagingシステムによる肺組織内でのリンパ球の動的挙動解析:独自に開発したマウス肺内in vivo live imagingシステムを用いて喘息肺での種々の機能的T細胞サブセットの肺内ダイナミクス解析を行い、浸潤様式の差異を解析した。また劇症型急性肺炎モデルでの免疫細胞分画の浸潤過程の挙動を解析した。3.抗原提示細胞による抗原取り込み過程の時間的定量的解析:GFP陽性の樹状細胞を移入し、異なる色で蛍光標識した抗原分子を吸入させて肺組織内で抗原を取り込む過程の時間的定量的解析を行った。その結果、樹状細胞は抗原吸入20分後には抗原分子の取り込みを開始することがわかった。4.ナイーブT細胞とエフェクターT細胞の浸潤の動態比較:OVAプライミングの必要性に関して、免疫していないOVA特異的ナイーブCD4T細胞とそれをin vitroで培養して分化させたTh2細胞を用いて実験を行い、浸潤の動態を比較検討した。その結果、エフェクターT細胞のみが抗原吸入後に肺に集積し、ナイーブT細胞は集積しないことが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
交付申請書に記載した研究目的を達成するために研究実施計画に従って研究を遂行した。その結果、抗体投与実験によりTh2細胞集積とfocus形成に関与する分子がいくつか同定できた。また劇症型急性肺炎モデルでの細胞集積とは関与する分子が異なり、炎症モデルにより細胞集積メカニズムが異なるとがわかってきた。また抗原提示細胞による抗原取り込み過程の時間的定量的解析ができた。さらにナイーブT細胞とエフェクターTh2細胞の動態の比較検討ができた。今年度は当初予定していた研究をほぼ計画通りに遂行することができたことから、順調に進展していると評価した。
これまでのところ本研究課題は当初の研究計画通りに進んでおり、次年度も研究実施計画に従って研究を推進していく予定である。具体的には、樹状細胞の抗原取り込み過程やリンパ球の動態、抗原提示細胞とTh細胞の細胞間相互作用について動的挙動解析を中心に研究を進めて行く予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)
PLoS ONE
巻: 8 ページ: e65494
10.1371/journal.pone.0065494
動く細胞と場のクロストークによる秩序の生成ニュースレター
巻: 2 ページ: 15-17
http://mb.med.yamaguchi-u.ac.jp/