研究領域 | 動く細胞と場のクロストークによる秩序の生成 |
研究課題/領域番号 |
25111726
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
中垣 俊之 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (70300887)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 計算物理 / 生体生命情報学 / 生物物理学 / 細胞、組織 / アクティブソフトマター |
研究概要 |
細胞原形質のレオロジー特性、とくに応力付加に対する応答性を実験的に明らかにするために、原形質の主たる構成タンパク質であるアクチン分子の集団挙動を、ズリ流れ下で観察した。一本一本のFアクチン分子を蛍光標識して可視化し、レーザー共焦点顕微鏡で単一分子レベルの挙動を動画像観察しながらズリを負荷した。我々は前年に、Fアクチン溶液が、シアバンド性を示すことをすでに発見しているが、本研究でその集団的分子構造すなわち紐状分子の絡み合いの変化を捉えることに成功した。 また、粘菌変形体アメーバ運動時に発生する基質面への力学張力を可視化することに成功し、その時のアクチン分子の状態を蛍光染色と全方位複屈折顕微鏡で観察することができた。粘菌の管ネットワーク形成において、閉じ込められた空間から這い出るとき、多様な空間形状に適応した効率的排出輸送流路ネットワークを作ることを発見し、その輸送性能を定量的に評価できた。粘菌の走性発現の方向決定における、外部摂動の効果を実験的に検証し、忌避刺激によって行動選択を促進することを見いだした。その力学機構を、細胞レオロジー方程式に基づいて提案できた。 加えて、繊毛虫の細胞運動において、キャピラリー空間から逃げ出るような適応行動の創発現象を発見し、その仕組みを細胞膜電位の基本方程式(ホジキンハクスレー型方程式)の挙動から解明できた。 次年度ではこれらの結果を踏まえて、現象を再現する数理モデルを構成して力学機構を解明する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた研究項目六つのうち、概ね四から五つで実験成果を得ることができた。これらのレオロジー的力学機構を解明するための、数理モデルの検討は、本年度でもすでに取り組んできたが、次年度には成果を出す所まで押し進める予定である。概ね予定通り順調な進捗と言える。本年度予定した、磁気ビーズ導入による生細胞レオロジーの観察はまだ進展させられていないが、実体顕微鏡下での粒子三次元トラッキングシステムの確立は為し得たので、このサブテーマは次年度へ持ち越しとなった。
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今後の研究の推進方策 |
実験研究を踏まえて、細胞の運動や形態形成におけるレオロジー的な力学機構を解明するために、数理モデル化を重点的に押し進め、実験結果と合わせて論文執筆までこぎつける。そのために、レオロジーと連続体力学の最新動向を吸収し、またシミュレーションの数値解法の改良も進めるため、専門家との議論を進めたり、関連書籍にあたるなどする。当該新学術領域内にいる、これらの専門家と連携することも目指す。
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