研究領域 | 動く細胞と場のクロストークによる秩序の生成 |
研究課題/領域番号 |
25111728
|
研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
|
研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
坂部 正英 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (00525983)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 心臓発生 / シグナル伝達 / 心内膜床 / 内皮間葉形質転換 |
研究概要 |
心臓中隔や弁は、初期胚心臓の流出路と房室管に認められる一対の隆起「心内膜床」が分化して形成される。したがって、この心内膜床の形成不全は心室中隔欠損や弁形成異常などの様々な先天性心疾患の原因となる。これまでの研究により、心内膜床は初期胚心臓の心筋から分泌されるTGFb2およびBMP2のシグナルを受けた内皮細胞が間葉細胞へと形質転換(Endothelial-mesenchymal transformation; EMT)することによって形成されることがわかってきている。しかしながら、なぜ房室管と流出路領域の内皮細胞のみがEMTを起こすのか?という疑問はいまだに解消されていない。 我々は房室管と流出路領域が心内膜EMTを誘導する「場」であると考え、この「場」をつくりだすメカニズムの解明を試みている。これまでの研究により、心内膜内皮細胞はNotchシグナルが「ON」の細胞と「OFF」の細胞が混在し、不均一なシグナル伝達に制御される細胞集団であることがNotch活性モニタリングマウスの解析により明らかとなった。また、Notchの下流ターゲット因子であるHrt1/Hrt2遺伝子の欠損マウスは心内膜床形成不全を示したことから、NotchシグナルがEMTの「場」を形成している可能性が示唆された。しかしながら、Notchシグナルの活性化だけではEMTは誘導されないことがわかっている。したがって、本研究により、心内膜床を形成するメカニズムには、NotchシグナルでつくられたEMTの「場」にクロストークする他のシグナルの存在が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究内容として心内膜床形成におけるNotchシグナルのライブイメージング解析を予定していたが、レポーターマウスから得られた組織を培養系に移すとレポーターの発現が著しく低下することから、使用するトランスジェニックマウスのラインを再度検討する必要性が生じている。心内膜床形成におけるHrt遺伝子の意義の検討については計画通りに遂行できており、全体的にはおおむね順調に進展していると判断できる。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた結果から、心内膜EMTを過不足なく誘導するにはNotchシグナルの他になんらかのシグナル伝達がクロストークする必要性が見出された。我々は先行実験により、BMP9によるALK1レセプターの活性化によって、Notchシグナルのターゲット因子であるHrtやHesなどの転写因子の発現が上昇することを見出している。したがって、Notchシグナルによって形成されたEMTの「場」にBMP9-ALK1シグナルがクロストークして心内膜EMTを誘導している可能性が非常に高い。今後の実験としては、心内膜床形成におけるNotchシグナルとBMP9-ALK1シグナルのクロストークについて心内膜床培養モデルを用いて明らかにしていく予定である。
|