公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
平成25年度は、野生型(コントロール)において、シナプス領域を支配するグリア細胞組織のリモデリングのパターンを(A)幼虫グリア組織網の崩壊、(B)未成熟グリア細胞の細胞移動、(C)未成熟グリア細胞の成熟に注目して、時系列的に詳細に解析した。(A)2つの幼虫ニューロパイルサブタイプ、特異的なGAL4ドライバーを利用した遺伝学的トリックを用いて、細胞形態の追跡実験を行った結果、それぞれのグリアサブタイプは、変態期にダイナミックな形態変化を行うことが分かった。特に、幼虫被覆グリアは、変態期において、未成熟グリアが移動する細胞体層内側に広がるインターフェイス領域にメッシュシート状に広がり、未成熟グリア集団を取り囲むことが分かった。(B)未成熟グリア細胞集団特異的に発現する、gcm-GAL4を用いて調べた結果、これらの細胞に由来する細胞は変態期24時間までに、脳背側のインターフェイス全体にわたり広がっていくことが分かった。一方、脳腹側のインターフェイスにはgcm発現細胞に由来するグリア細胞が移動しないことより、当初考えていた未成熟グリア細胞集団以外の別の集団に由来するグリア細胞がこの領域を支配することが予想された。(C)成虫ニューロピルグリアサブタイプ特異的なGAL4ドライバーを利用して調べた結果、未成熟グリア細胞の形態的な成熟は、主に変態期の48時間から72時間に生じることがわかった。また、新規に同定した成熟したグリアで発現する3種類の新規の分子マーカーも変態期72時間までに発現することがわかった。以上の結果は平成26年度における、グリア細胞サブタイプの除去実験や細胞種特異的な遺伝子操作の実験の評価に必要不可欠な基礎データーとなる。
2: おおむね順調に進展している
平成25年度研究調書、研究計画に記した研究のうち、一部を除いては、ほぼ予定通り遂行していることより、おおむね順調に展開していると考えている。しかしながら、予想と異なる実験結果がでたことより、一部の実験については進行を送らせた。また、解析のための遺伝学ツールが予想通り動かなかったために、実験の細かな改変や修正が必要になったため、予想以上の時間を要してしまった実験もある。しかしながら、次年度の研究を考えると、本年度行う実験の改変や修正は必要不可欠であり、必要な遅延であると考えている。
平成26年度は、当初の予定通り、(A)幼虫グリア組織網の崩壊と未成熟グリアの奔放性の関連の、(B)未成熟グリア細胞の細胞移動のコントロール、(C)細胞競合による細胞数の調整、(D)未成熟グリア細胞の成熟過程(グリア組織網の形成過程)に注目して解析することを計画している。当初、本研究の主目的として、(1)「秩序の再構成」ならびに(2)「奔放性から秩序の形成」について理解することを考えたが、この二つを同時に進行することにより、研究の進行が遅れる場合には、(1)の「秩序の再構成」についての解析をまず終わらせることを予定している。その場合、この解析に関連する、実験(A)と(B)を優先的に行う事を考えている。
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Nat Neurosci
巻: 17 ページ: 631-637
10.1038/nn.3654