公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
イメージング技術の革新によってグリア細胞が神経回路の恒常性を維持し、その破綻によって発達障害、精神・神経疾患の形成に関与することが示唆されている。そのなかでもミクログリアは中枢神経系における免疫担当細胞であり、その由来は他のグリアと異なる。ミクログリアはこれまで発達期・病態における形態変化が著明であることが知られていた。そのためその発達・病態における変化をもたらす遺伝子発現変化そしてそれに引き続き起こる神経栄養因子、サイトカインの放出を介した神経保護作用や神経毒性作用に着目して研究が進められてきた。近年、ミクログリアは生理的な脳においてその突起を絶えず伸展させ、この動きによって1時間に1度5分程度、神経シナプスの活動を特異的にモニターしている。また発達期・障害時には、活動の弱いシナプスなどを貪食することによって除去し、シナプス数の制御を介して神経回路の形成・再編成を促進している。しかしながら実際に直接神経シナプスの活動を測定しながらミクログリアの動態がシナプス活動によってどのように変化するか、そしてミクログリアの動態が神経シナプスの形態に及ぼすかは未だ調べられていない。そこで成熟動物の運動学習課題下でのシナプスの活動とミクログリアにどのような相関があるかを調べ、ミクログリアがどのように神経シナプスの形態、数およびその活動を修飾しうるかさらにミクログリアの生理的な機能によって神経回路の恒常性が維持され、その破綻によって生じる疾患について考察する。本年度ミクログリアに緑色蛍光たんぱく質が発現しているマウスに緑色カルシウム感受性蛍光たんぱく質および赤色タンパク質をウィルスによって発現させ、2光子顕微鏡下でシナプス活動とミクログリアの接触の相関を検定することに成功した。またミクログリアの生理的な機能をリポ多糖類の腹腔内投与によって阻害した結果学習行動が損なわれることが明らかとなった
3: やや遅れている
当初赤色カルシウム感受性蛍光たんぱく質を使用していたが、シナプス反応が検出できず緑色カルシウム感受性蛍光たんぱく質と赤色蛍光たんぱく質を同時に発現させる方法に変更した。またこれらの実験を最適化するために時間を要した。
個々の運動学習下でのシナプス活動の分布、強度とミクログリア機能の相関、つまりミクログリアが学習過程においてシナプスの恒常性および機能維持・修飾に働くかを検証する。その上で学習過程での神経シナプスの入力の強弱により起こるシナプスの選別にミクログリアが関わることを実証する。またミクログリアの機能を落として、シナプスの選別過程を阻害することによる学習過程の変化を個体の運動をモニターすることで明らかにする。次に、ミクログリアの機能が、シナプスの選別に関わっていることで生じる、シナプスレベルでの変化が単一細胞レベルでの入力出力の相関に影響するかを、電気生理学的手法とオプトジェネティックスを組み合わせることにより明らかにする。
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