研究領域 | ユビキチンネオバイオロジー:拡大するタンパク質制御システム |
研究課題/領域番号 |
25112501
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
山口 淳二 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10183120)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ユビキチンリガーゼ / 植物免疫 / 膜交通 / 葉緑体 / 植物 |
研究実績の概要 |
本研究では「ユビキチン修飾による膜交通と葉緑体形成制御機構の解明」を目指し,3研究課題に取組んでいる。H25年度は以下のような成果を得た。 計画1)ATL31によるSNAREタンパク質のユビキチン修飾制御機構の解析: ATL31の新規相互作用因子として細胞膜局在型SNAREであるSYP121を同定した。syp121変異体は,atl31変異体と同様に,C/Nストレスに過剰応答した。SYP121は,うどんこ病菌が植物葉に侵入する部位に特異的に集合することで,侵入のバリアーとなる特殊な細胞壁である「パピラ」の形成に重要なはたらきを示す。そこで,ATL31のうどんこ病菌感染時の細胞内局在を観察したところ,通常時は細胞膜にのみ局在しているATL31が,SYP121と同様にうどんこ病菌侵入部位に集合している様子が観察された。次に,うどんこ病菌への抵抗性を検証した結果,ATL31過剰発現体(35S-ATL31)はsyp121変異体とは逆に侵入率が低下しており,それはパピラ形成の速度が増加しているためであった。これらのことから,ATL31はSYP121とともにパピラ形成に関与しており,その結果,C/N応答のみならず,うどんこ病菌への抵抗性に重要なはたらきをもっていることを証明した。これらの知見をまとめて,Plant Physiology誌に発表した。 これ以外に,i) SNAREタンパク質SYP42,43と結合し,自身の細胞内局在性や膜交通を制御していること,ii)自身のリン酸化制御を介して14-3-3タンパク質の結合性と分解性を制御していること,を証明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ATL31相互作用蛋白質として,14-3-3蛋白質だけでなく,SYP121, SYP42,SYP43棟を探索し,その結合と機能について照明しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
計画2)ユビキチン修飾による膜交通-植物免疫制御機構の解析: ATL31と相互作用するSNAREタンパク質SYP121は,植物の病害抵抗性と深いかかわりを持つ。糸状菌であるうどん粉病菌を植物に感染させると,SYP121欠損変異植物syp121-1では野生型(WT)と較べて抵抗性が劇的に減少するのに対し,ATL31過剰発現植物ATL31oxでは,抵抗性が上昇する。この抵抗性には,パピラという細胞壁の肥厚化が関与している。パピラは,カロース等の細胞壁成分がゴルジ体からの小胞輸送により感染箇所に分泌されることで形成される。ATL31各種変異体やSNARE変異体を用いた分子遺伝学的解析,また上記タンパク質の生化学,細胞生物学的解析により,その詳細を解明する。 計画3)ユビキチン修飾による葉緑体形成制御機構の解析: 植物プロテアソームと相互作用するタンパク質のプロテオーム解析により,複数の葉緑体局体タンパク質が同定された。詳細な研究解析の結果,i) プロテアソームサブユニットRPT2aは,複数の葉緑体タンパク質移行トランジットペプチド(以下cTP)と相互作用すること,また,ii) LTA2のような葉緑体タンパク質は,ユビキチンリガーゼAtCHIPと相互作用すること,等を証明した。核コードの葉緑体タンパク質は移行シグナルであるcTPをHSP70等で保護され,最終的には葉緑体に移行する。しかし,環境変化により葉緑体移行が合目的でなくなった場合には,AtCHIPによりユビキチン修飾を受け,葉緑体に移行せず,プロテアソームにより細胞質で速やかに分解される。現在各種のストレス実験等により,葉緑体タンパク質前駆体の蓄積,あるいはユビキチン化の多様性等についての解析を進めている。最終的には,ユビキチン修飾による新たな制御機構-タンパク質のオルガネラ移行制御-を解明する。
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