研究領域 | ユビキチンネオバイオロジー:拡大するタンパク質制御システム |
研究課題/領域番号 |
25112503
|
研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
稲田 利文 東北大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (40242812)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | ユビキチン / mRNA品質管理 / 翻訳アレスト / リボソーム |
研究概要 |
正確な遺伝子発現は生命現象の根幹であり、その破綻や異常は様々な疾患の原因となる。遺伝子発現の各段階でのエラーや外界からのストレスによって、さまざまな異常mRNAや異常タンパク質が合成されるだけでなく、タンパク質のフォールディングにも異常が生じる。細胞の保持するmRNA品質管理機構は、DNA上の変異やスプライシング反応等のエラーによって合成される様々な異常mRNAを認識し排除する。タンパク質の品質も新生鎖の段階から監視されるが、新生鎖とmRNAの品質管理の関係に注目する研究は皆無であった。申請者は、異常新生鎖の認識とmRNAの品質管理との密接な関係を見いだした。また、異常なmRNA由来の新生鎖の分解機構やmRNA切断における新生鎖の機能を明らかにした。リボソームが連続した塩基性配列を持った新生鎖を合成すると、翻訳伸長段階で停止(翻訳アレスト)する。その結果、No-Go-Decay(NGD)と呼ばれるmRNA品質管理機構によってmRNAが切断される。さらに、リボソームが各サブユニットに解離し、60Sサブユニット上の新生鎖がユビキチン化された後にプロテアソームによって迅速に分解される(NGPD)。最近申請者は、この異常新生鎖による翻訳アレストの結果としてmRNAとタンパク質の品質管理機構が作動するためには、E3ユビキチンライゲースHel2による停滞したリボソーム上の標的因子のユビキチン化が必須であることを見出した。東京都総合医学研究所の佐伯泰博士との共同研究により、ユビキチン化の標的候補となるリボソームタンパク質を決定し、Hel2によるリボソームサブユニット中の特異的リジン残基のユビキチン化が、タンパク質品質管理機構(新生鎖の分解:NGPD)に必須であることが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
東京都総合医学研究所の佐伯泰博士との共同研究により、ユビキチン化の標的候補となるリボソームタンパク質を決定した。その結果、Hel2の標的因子として40Sリボソームサブユニット中の特異的リジン残基が複数箇所同定された。同定されたユビキチン化されるリジン残基について、アルギニン残基への置換変異体を作製し、mRNA品質管理機構(mRNAの分子内切断:NGD)とタンパク質品質管理機構(新生鎖の分解:NGPD)の効率を検討している。現在までに、Hel2によるリボソームサブユニット中の特異的リジン残基のユビキチン化が、タンパク質品質管理機構(新生鎖の分解:NGPD)に必須であることが明らかになった。東京都総合医学研究所における質量分析の高い感度と正確性が、研究の進展に大きく寄与した。
|
今後の研究の推進方策 |
Hel2が翻訳アレスト状態のリボソームを認識し、標的因子をユビキチン化することで、mRNA品質管理機構へと導く分子機構の理解を目指し、平成26年度は以下の研究を行う。 ① Hel2が翻訳アレスト状態のリボソームを認識し、品質管理へと導く機構を明らかにする。 ② Hel2によるユビキチン化の標的因子の同定と、ユビキチン化の機能を解明する。:Hel2によってユビキチン化されるリボソームタンパク質のリジン残基を同定し、アルギニン残基へ置換することで、mRNA分子内切断と新生鎖のプロテアソームによる分解における機能を明らかにする。 ③ Hel2によってユビキチン化された新生鎖のmRNA分子内切断における機能解析:Hel2は新生鎖自身をユビキチン化するため、mRNA分子内切断における機能を解析する。具体的には新生鎖内の全てのリジン残基をアルギニンに置換した変異体を用いて、翻訳アレストに起因するmRNA分子内切断の有無を解析する。
|