研究領域 | ユビキチンネオバイオロジー:拡大するタンパク質制御システム |
研究課題/領域番号 |
25112506
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
KIM Minsoo 東京大学, 医科学研究所, 特任准教授 (50466835)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 病原細菌 / エフェクター / ユビキチン / 感染制御 |
研究概要 |
腸管病原細菌による感染疾患は先進国でも感染が拡大しているが、有効なワクチンが開発されてないため、新たなワクチン・治療薬の開発が喫緊の課題である。ユビキチン・プロテアソーム依存性の蛋白質分解経路は高次生命現象やヒト疾患を理解するために不可欠な要素となっている。近年、病原細菌やウイルスによる感染症においても、ユビキチン分解経路が重要な役割を果たすことが明らかになってきた。本研究では、腸管病原細菌 (EPECや赤痢菌)の感染成立のために、病原体大腸菌側と宿主側の各々が有するユビキチンシステムが果たす役割解明を目的とする。 本年度はEPECの感染成立に重要なエフェクター(Tir)が293T細胞内でユビキチン化されることを確認し、そのE3の同定を行った。Tirと同定したE3蛋白質を細胞に共発現させ、GST-Pull down法を用いて両者が結合することを確認した。その結合にはTirのチロシンリン酸化が必須で、チロシンリン酸化を行うチロシンキナーゼやTirのリン酸化残基を同定した。さらに293T細胞内にユビキチンリガーゼとTirを発現させると同定したユビキチンリガーゼ依存的にTirがユビキチン化することを確認した。 さらに赤痢菌のユビキチンリガーゼであるIpaH4.5が293T細胞内において、プロテアソーム構成因子(基質)と結合し、IpaH4.5依存的にユビキチン化・分解することを明らかにした。赤痢菌感染時においてもIpaH4.5依存的に基質の分解が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
EPEC感染成立に重要なエフェクターを分解するユビキチンリガーゼを同定し、さらに赤痢菌のユビキチンリガーゼの基質分子を同定することができたので、おおむね順調に進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、Tirのユビキチン化に対する意義を調べる。同定した宿主のE3蛋白質を粘膜上皮細胞において強制発現もしくは RNAi法により抑制した時の、EPEC 感染に対するTirの分解の意義を調べる。 赤痢菌のユビキチンリガーゼについては同定した基質の分解が赤痢菌感染成立に果たす役割を調べる。具体的には、同定された基質の野生型またはノックアウトマウスに野生株またはエフェクターの欠損株を感染させ、腸管組織への感染能や腸管細胞の応答を病理組織学的手法により検討する。
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