公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
細胞内に数多く存在する蛋白制御系の中でユビキチン化が「時を得て選択的に基質タンパク質を識別」するためには、拮抗する制御系から適正なタイミングで選択される必要がある。ナイミーヘン症候群の蛋白NBS1はそのC末側の約100aaの狭い領域にDNA修復を協調的に行うための、ユビキチン化呼応素を含む5種類の蛋白との結合ドメインが存在する。本研究では、この中で損傷乗り越えDNA合成(RAD18によるPCNAユビキチン化)がクロマチン・リモデリング(RNF20によるH2Bユビキチン化)が選択的に開始する機構を解析する。さらにRAD18結合ドメイン欠損のNBS1ノックインマウスの解析により、ユビキチン蛋白制御異常が原因のナイミーヘン症候群の分子病態を明らかにすることを目的とする。RNF20によるヒストンH2Bユビキチン化がクロマチン・リモデリングを行ってRAD51などのDNA修復蛋白がDNA損傷部位に近づけるようになることを我々は以前に報告した。堅いクロマチンにRNF20が近づけるのは,既にクロマチン内に存在する蛋白による促進が起こるだろうと思われるので、ヒストンシャペロンFACTとRNF20との関係を検討した。その結果、FACTの構成因子SUPT16hのC末側でDNA損傷依存的にRNF20が結合することが判明した。この結合が出来ない変異体では、RNF20の放射線フォーカス形成、クロマチン・リモデリングが起こらず、結果として放射線高感受性となった。一方、RAD18がNBS1と結合するためには、NBS1の他のドメインが必要であることがわかり、現在そこに結合する蛋白の同定を行っている。また、ユビキチン結合ドメインをノックインしたNBS1マウスは生存可能であり(ノックアウトは胎生致死)、ナイミーヘン症候群の特徴である免疫組換えに異常を呈することが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
研究は2年計画で進めていたが、今年度はRNF20経路の解析が予定通り進行した。もう一方のRAD18経路についても、手がかりが得られたので、ほぼ順調に進行していると判断した。
DNA損傷後にRAD18がNBS1に結合するためにNBS1の未知のドメインが必須であることが判明した。現在、マススペクトルを用いたプロテオミックスにより結合蛋白の同定を進めている。この蛋白の機能解析により、DNA損傷からNBS1、そして RAD18を介したPCNAユビキチン化の経路が明らかになる。また、本年度明らかにしたFACTからRNF20の経路との比較により、DNA修復ネットワークにおけるユビキチン化の選別とタイミングの全体機序を明らかにすると期待される。我々が作製したNBS1ユビキチン結合ドメインのノックインマウスは、ナイミーヘン症候群患者と同じく免疫不全を呈した。この原因として、VDJ組換え、クラススイッチ組換え、hypermutationの3種類の経路が考えられるので、その機構も明らかにする予定である。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 2件)
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