研究領域 | ユビキチンネオバイオロジー:拡大するタンパク質制御システム |
研究課題/領域番号 |
25112514
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
杤尾 豪人 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70336593)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ユビキチン / X線結晶構造解析 / NMR / 構造生物学 / NF-κB |
研究概要 |
ユビキチン(Ub)のLys48を介して形成されたポリUb鎖は、それが付加されたタンパク質をプロテアソームでの分解へと導くが、生体内には、Lys48型の他に7種類の異なるポリUb鎖が見出されている。これらLys48型以外の鎖は「タンパク質分解」とは異なる生物学的な意味を持つ。その中の「直鎖型Ub鎖」によるタンパク質修飾は、NF-κBシグナルを制御する重要な役割を果たすことが明らかにされている。本研究では、直鎖型Ub鎖を形成するユビキチンリガーゼ(E3)である、LUBACの構造生物学的解析から、直鎖型Ub鎖の伸長反応について理解することが目的である。 上記、LUBACは、細胞内では三つのタンパク質(HOIL-1L、HOIP、Sharpin)の複合体からなることが知られているが、試験管内ではHOIL-1LとHOIPのみの複合体でも酵素活性を有する。また、様々な生化学実験から、HOIPのC末端側の領域のみ(HOIP-dN)でも酵素活性が発揮されることが分かっている。平成25年度は、HOIP-dNとHOIL-1Lの一部(HOIL-1L-dC)を含む複合体の結晶化を目指した。両者の複合体を精製し、結晶化を行ったが、複合体の結晶は得られなかった。一方で、HOIP-dNの結晶を得ることができた。この結晶のX線回折実験を行ったところ、データは得られたものの、構造決定を行うには分解能は不十分であった。また、分析超遠心の結果、HOIP-dNが、溶液中では安定な高分子量会合体を形成していることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
構造決定には至っていないものの、HOIP-dNについては、回折データが得られる結晶を得ており、さらなる結晶化条件の検討によって構造解析が可能になると見込まれる。さらに、HOIP-dNの高次会合体についての情報を得ることができた。これは、新しい知見で、HOIPの酵素活性の自己阻害機構を解明する上で重要である。HOIP-dNとHOIL-1Lの複合体については、大量調製はできていないものの、複合体を調製する方法は見出しており、さらなる検討によって、大量調製が可能になるものと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
HOIP-dNについては、さらなる結晶化条件の探索を行い、より高分解能のX線回折データを得ることを目指す。また、HOIP-dNとHOIL-1Lの複合体については、安定な試料を大量に調製することができていないため、コンストラクトの変更も視野に入れ、タンパク質試料の精製条件を検討する。 これまでの知見から、HOIP-dNは自己阻害型の構造を取っていると考えられる。これが、HOIL-1Lと相互作用することにより解除され、完全な酵素活性を発揮すると思われる。これを調べるために、NMRを使って、HOIP-dNとHOIL-1Lの相互作用部位を特定する。
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