公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
ユビキチンリガーゼ(cIAP1)とエストロゲン受容体(ER)を細胞内で強制的に結合させ、ERのcIAP1によるユビキチン化とプロテアソームによる分解を引き起こす化合物SNIPER(ER)をデザイン・合成し、その活性評価を行った。SNIPER(ER)は想定したメカニズムで乳がん細胞においてERのユビキチン化と分解を引き起こした。また、乳がん細胞はERの分解に引き続いて速やかに細胞死を起こした。詳しい解析の結果、乳がん細胞はERの分解後に多量のReactive Oxygen Species (ROS)を産生し、ネクローシス様の細胞死を起こす事が分かった。プロテアソーム阻害剤MG132はER分解、ROS産生、ネクローシスのすべてを阻害したが、ROSスカベンジャーのNACはER分解を阻害せずROS産生とネクローシスを抑制した。これらの研究成果をまとめて論文発表した。任意の標識タンパク質をユビキチン化するSNIPERを開発するために、Hisタグと結合するNi-NTAを利用してSNIPER(His)をデザイン・合成した。SNIPER(His)は、in vitroにおいてHisタグ標識タンパク質とcIAP1を架橋する活性を示したが、Ni-NTA部分の親水性が高いため細胞内への透過性が著しく悪い性質を示した。そこでNTAカルボン酸部分のアセチル化等の修飾によりSNIPER(His)の膜透過性を高めるよう種々の検討を行い、細胞内透過性を高めたSNIPER(His)化合物が得られた。任意のユビキチンリガーゼを使って標的タンパク質を強制的にユビキチン化する実験システムを構築するために、ヘテロ2量体化を利用して標的タンパク質とユビキチンリガーゼを結合させる予備検討を行った。これまでの検討で化合物添加によるヘテロ2量体形成が確認できた。
2: おおむね順調に進展している
SNIPER(His)の大きな問題であった膜透過性の改善にメドがたち、細胞内にうまく導入できるようになった。またヘテロ2量体形成の実験系構築も順調に進んでいる。
細胞内に導入したSNIPER(His)によるHisタグ標識タンパク質のユビキチン化とその性状について、解析する。またヘテロ2量体形成の実験系についても、ユビキチンリガーゼと標的タンパク質の強制的な結合によりユビキチン化が誘導されるかどうか、形成されるユビキチン鎖の種類、細胞内での標的タンパク質の挙動などについて検討を行う。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (7件) 備考 (1件)
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http://www.nihs.go.jp/dfbg/frame.html