公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
申請者は研究計画に従って研究を遂行し、「異常なミトコンドリアによってParkinが活性化される仕組み」に関して顕著な進展があった。ひとつはParkinのリン酸化を介した制御であり、もう一つは活性中心であるCys431とユビキチンが高エネルギーチオエステル結合を形成することによる制御である。申請者は2010年にはPINK1のプロテインキナーゼ活性がParkinの異常ミトコンドリアへの移行とユビキチン連結酵素(E3)活性化に必須であること、つまりPINK1のキナーゼ活性とParkinのE3活性が細胞内で良く相関することを報告した(JCB, 2010)。本年度はこのParkinの活性化を分子の言葉で説明するべく研究に邁進した。まずParkin様のタンパク質HHARIがRING-HECT hybrid型のE3であることに着想を得て、Parkinの活性中心がCys431であることや、このCys431とユビキチンがチオエステル結合した中間体を形成してParkinがE3として機能することを見出した。更に、PINK1のリン酸化標的を解析する過程で、ParkinのSer65がPINK1依存的にリン酸化されることや、このSer65リン酸化がCys431を介したユビキチン-チオエステル結合中間体形成に重要であることを報告した(Iguchi JBC 2013)。これらの結果から考察すると「活性中心であるCys431が普段はParkinの自己阻害ドメインによって塞がれているが、これがPINK1依存的なParkinのSer65リン酸化を介して脱抑制される」モデルが示唆されるが、「ParkinのSer65リン酸化模倣変異体(S65D, S65E)が細胞内でPINK1機能をバイパスしない」という実験結果との矛盾があり、次年度の研究課題であると考える。
2: おおむね順調に進展している
ParkinのSer65がPINK1依存的にリン酸化されること、そのリン酸化がParkinのCys431を介したユビキチンとのチオエステル結合の形成やParkinの活性化に重要であることを見出しており、さらに上記の内容でJBC誌に論文を報告した。研究は概ね順調に推移していると考える。
研究実績概要に記したように、「活性中心であるCys431が普段はParkinの自己阻害ドメインによって塞がれているが、これがPINK1依存的なParkinのSer65リン酸化を介して脱抑制される」という仮説が考えられるが、「ParkinのSer65リン酸化模倣変異体(S65D, S65E)が細胞内でPINK1機能をバイパスしない」という実験結果と矛盾しており、次年度には両者を統合するような仮説の提出と、その実験的な検証に挑む。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 4件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)
J. Biol. Chem.
巻: 288 ページ: 36372-36384
doi:10.1074/jbc.M113.509653
J. Biol. Chem.,
巻: 288 ページ: 22019-22032
doi: 10.1074/jbc.M113.467530
Genes to Cells
巻: 18 ページ: 672-681
DOI: 10.1111/gtc.12066
http://www.igakuken.or.jp/pro-meta/