公募研究
【研究経緯と目的】多発性骨髄腫 (MM) に対する治療成績は、近年の造血幹細胞移植術の進歩やボルテゾミブやレナリドマイドなどの新規治療薬の開発により急速に向上してきた。しかし根治できるMMはごく一部の症例に限られ、その原因の一つとして、MM細胞を供給する幹細胞が残存することが指摘されている。本研究では、①低酸素環境下にあるMM幹細胞の性状・動態を解析し、②MM根治に向けた標的分子を探索することを目的とした。【研究実績の概要】①低酸素環境適応MM(MM-HA)幹細胞の性状解析:MM細胞株を低酸素(1%02)環境下で長期間培養して、AMO-1/HA、OPM-2/HA、IM-9/HAの3つの低酸素適応細胞株を樹立した(MM-HA細胞株)。MM-HA幹細胞の性状解析では、SP分画やGo期の細胞が多く、β-cateninの発現が高いなど、いわゆる”幹細胞性”を示すことを確認した。②細胞増殖はHA株で有意に遅く、Ki67/7-AADによる細胞周期解では、7-AADの蛍光強度が2nに存在するG0/G1分画のうち、Ki67陰性のG0期の細胞集団は、HA株において親株より有意に多く存在した。これらの細胞株のうち、AMO-1親株とHA株を用いて正所性MM担癌モデルマウスを作製し生存期間の検討した。HA株を移植したマウスにおいて有意に生存期間の短縮を認めた。これらのことからMM-HA株も、いわゆる“がん幹細胞”の性質を有することが示唆された。次に、我々がMMの新たな治療標的として明らかにしてきたWnt/β-catenin経路について検討した。HA株においてβ-cateninの発現増強やWnt/β-catenin/TCFシグナルの亢進は認めず、HA株のMM幹細胞性にはWnt経路は関与していないことが推察された。今後、MM幹細胞維持に重要な経路について網羅的に解析し標的分子を同定したい。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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