研究領域 | がん微小環境ネットワークの統合的研究 |
研究課題/領域番号 |
25112711
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
田原 栄俊 広島大学, 大学院医歯薬保健学研究院(薬), 教授 (00271065)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | エクソソーム / マイクロRNA / 癌 / 細胞外小胞 |
研究概要 |
腫瘍形成のがん微小環境において、老化細胞ががん微小環境にはたす役割が重要視されている。我々は、線維芽細胞の細胞老化において顕著な細胞外小胞(エクソソーム)の分泌量が顕著に増加していることを見いだした。用いた線維芽細胞TIG-3の細胞外小胞の粒子径をナノパーティクル計測器qNANOを用いて測定したところ、約130nmの平均粒子径であり、細胞老化においてはほぼ不変であった。細胞老化で増加する細胞外小胞の機能を明らかにする目的で、乳癌および子宮頸がんのがん細胞株に、若い線維芽細胞と老化線維芽細胞の培養上清から精製した細胞外小胞を持続的に添加したところ、何れのがん細胞株においても老化細胞の細胞外小胞を添加した場合に細胞増殖の抑制が見られた。がん細胞に対する細胞外小胞の添加による細胞外小胞の取込効率は、精製した細胞外小胞をPKH67でラベルしたものをがん細胞に添加して評価し、ほぼ全てのがん細胞に細胞外小胞が取り込まれていることを確認した。この条件下において、がん細胞のコロニーフォーメーションアッセイを、若い線維芽細胞由来の細胞外小胞と老化線維芽細胞由来の細胞外小胞添加での比較をしたところ、老化線維芽細胞由来の細胞外小胞添加で培養したがん細胞のコロニー形成が顕著に阻害された。同様に、若い線維芽細胞由来の細胞外小胞と老化線維芽細胞由来の細胞外小胞添加でのがん細胞の浸潤能に対する影響を検討したところ、老化線維芽細胞由来の細胞外小胞は、がん細胞の浸潤能を顕著に抑制することを見いだした。以上の結果から、線維芽細胞から分泌される細胞外小胞は、細胞老化と共に増加し、がんの微小環境においては、癌細胞の増殖、生存率および浸潤能を抑制する機能を持つことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
老化線維芽細胞由来の細胞外小胞の機能として、がんの微小環境において、がん細胞の浸潤能を顕著に抑制することを見いだしており、当初の計画である老化細胞の細胞外小胞の機能を示すことができたため
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今後の研究の推進方策 |
線維芽細胞から分泌される細胞外小胞は、細胞老化と共に増加し、がんの微小環境においては、癌細胞の増殖、生存率および浸潤能を抑制する機能を示す分子機構を明らかにすることが重要である。そのため、老化細胞由来の細胞外小胞をがん細胞に添加したときにトランスクリプトーム解析を行う。また、細胞外小胞に含まれるマイクロRNAの解析を行うため、次世代シークエンスによる解析を実施し、若い細胞由来の細胞外小胞と老化細胞由来の細胞外小胞のがん細胞に対する影響におけるマイクロRNAの寄与を明らかにする。また、がんの微小環境において、がん細胞が分泌する細胞外小胞が間質細胞に対する影響も検討する。
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