研究領域 | がん微小環境ネットワークの統合的研究 |
研究課題/領域番号 |
25112712
|
研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
|
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
東山 繁樹 愛媛大学, プロテオサイエンスセンター, 教授 (60202272)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 腫瘍血管新生 / がん微小環境 / Cullin3 / ユビキチンリガーゼ / タンパク質分解 |
研究概要 |
血管新生は、固形腫瘍増殖や組織損傷時の修復過程に必須であり、その制御は血管内皮細胞の増殖促進と抑制のバランスで成立している。私どもはこれまでに、血管内皮細胞の増殖促進(VEGFシグナル)と抑制(Notchシグナル)のシグナルバランスを制御する分子複合体BAZF-CUL3を同定してきた。さらに、BAZFおよびCUL3のマウス網膜でのノックダウンによる血管新生評価から、BAZFノックダウンに比べ、CUL3ノックダウンでは極めて強い血管崩壊の表現系が現れることを観察した。このことから、CUL3はBAZF以外にも異なる複合体のパートナーが存在し、血管新生に大きく絡む因子であることが強く示唆された。そこで本研究では、BAZFとCUL3の機能解析をさらに押し進め、血管新生制御の新たな分子機構の解明を目指した。 まず、CUL3の標的基質を探索するために、コラーゲンゲル三次元培養法を用いたタイムラプスイメージング解析を行った結果、CUL3ノックダウン群では、血管内皮細胞の増殖抑制と共に、伸展阻害が起こることで、血管形成抑制に至ることが示された。そこで、これら表現系の原因を解明するために、Western blot法を用いて血管新生因子や細胞外基質に対する受容体タンパク質の発現量について解析した。その結果、CUL3ノックダウンによってVEGFR2とintegrinβ1の著しい発現低下が認められたのに対し、Rho GTPaseファミリータンパク質の顕著な上昇が認められた。これらの結果はBAZFノックダウン群には認められなかった。以上のことから、血管新生においてCUL3はBAZFを介したVEGF-Notchシグナルのバランス調節に加えて、細胞伸展や細胞外マトリクスへの接着にも重要な役割を担うことが新たに示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CUL3ノックダウンによってVEGFR2とintegrinβ1の著しい発現低下を昨年明らかにしたのに引き続き、本年度は、Rho GTPaseファミリータンパク質が顕著に増大する事を明らかにした。これらの結果はBAZFノックダウン群には認められなかったことから、血管新生においてCUL3はBAZFを介したVEGF-Notchシグナルのバランス調節に加えて、細胞外マトリクスへの接着だけでなく細胞伸展にも重要な役割を担うことを新たに示すことができた。計画の推進に大きなトラブルはなく、順調に進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
CUL3の幅広い基質認識特性は、基質を直接結合するBTBドメイン構造を持つリンカータンパク質の多様性にある。このBTBドメイン構造を有するタンパク質は、ヒトでは183種存在することが知られている。そこで、培養血管内皮細胞で発現の認められるBTBタンパク質遺伝子を発現プロファイル解析よりピックアップし、発現量の多いものからsiRNAによる遺伝子ノックダウンと、CUL3ノックダウン時に見られる細胞表現型、ならびにタンパク質産生量との比較解析から、CUL3リンカー候補分子を探索する。
|