公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
がんの増殖・浸潤・転移には、がん細胞自体の特性のみならず、周囲微小環境との相互作用も重要である。近年接触抑制シグナルの鍵経路としてHippo 経路が脚光を浴びている。しかしながら哺乳類Hippo 経路各分子には相同分子が極めて多く、Hippo 経路遺伝子欠損マウスの多くが胎生致死であったため、各Hippo経路分子の各組織における役割や破綻病態の多くが未だ不明で、Hippo 経路によるがん微小環境制御に至っては、未だ解析されていなかった。我々は肝臓特異的MOB1欠損マウスを作製し、このマウスに炎症細胞浸潤や線維化などのがん微小環境変化を伴った胆管増生をみること、その後全例に胆管がんや肝がんを発症することなどを見出した。本研究をさらに推進する事は、微小環境組織におけるHippo 経路の役割解明のみならず、がん微小環境を標的とした新規がん治療薬開発等につながり、作製したマウスは腫瘍発症・進展モデルマウスとなり治療開発に必須なツールとなる。
2: おおむね順調に進展している
平成25年度には、肝臓特異的にMOB1を欠損させると、顕著な炎症細胞の集積と線維化を伴う胆管増生をみて、生後3週以内に半数以上のマウスが死亡することを見いだした。生き残ったマウス肝臓では、増殖亢進、未分化胆管細胞への分化傾向の亢進を認め、胆管がんや肝がんを早期に発症した。またこれらマウスの表現型は、Yap1に強く依存し、一部はTAZやTGFBR2に依存することも見いだした。このようにMOB1は胆管の形態形成に重要であり、また胆管がんや肝がんの癌抑制遺伝子としても作用することを見いだした。また、Yap1、TAZ、TGFBR2を標的とする薬剤が、これらがんの治療法に奏功する可能性をも見いだした。以上のように、本研究は概ね順調に進展しているものと思われる。
平成26年度には、肝臓特異的MOB1欠損マウスで過剰に発現するJagged1が、胆管増生や肝臓腫大などの表現型にどの程度関与するのかを、Hes1遺伝子改変動物とのさらなる交配により解明する。またMOB1欠損でみられる炎症細胞増多や線維化などの微小環境変化がおこる肝臓以外の組織を見いだすとともに、癌幹細胞数の変化をも検討する。さらに線維芽細胞や免疫担当細胞等のがん微小環境相当細胞を欠損させたマウスが、MOB1欠損による腫瘍形成や腫瘍進展に与える影響をも解明する。その他、これら組織以外に血管内皮細胞、軟骨・骨芽細胞、癌幹細胞でMOB1を欠損させたときの、腫瘍細胞の進展性も解明する。このようにして、Hippo経路によるがん微小環境制御機構を明示する。
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