公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
テトラヒメナでの相同組換えによるダイニン重鎖組換え体作成のために、テトラヒメナ用にコドンを最適化したhGFPタグ (GFPのループ内にHisタグを挿入), hsGFP-tag (GFPのループ内にHisタグ, SBPタグを挿入)した蛍光観察・精製・構造解析用の多機能タグを構築した。これらのタグを相同組換えでテトラヒメナ大核内に導入するための薬剤耐性遺伝子とのカセットとなったベクターを構築した。テトラヒメナの大核内には遺伝子が45コピー存在しているため、組換え体遺伝子の割合を増やすため、薬剤濃度を段階的に上げながら培養を続ける工程(フェノティピック・アソートメント)が必要である。そのために、外腕ダイニンβHC(DYH4)にhGFPを付加し、フェノティピック・アソートメントを行ったところ、45コピーの遺伝子が全て組換え体ダイニン重鎖に置き換わった株として樹立することができた。組換え体ダイニン重鎖が繊毛内に局在することを蛍光顕微鏡観察とウェスタンブロッティングにより確認した。さらに繊毛からの組換え体ダイニン複合体の精製を行ったところ、野生株よりも組換え体テトラヒメナにおいて、ダイニン重鎖の分解が起こりやすいことが判明したため、培養条件・精製条件を改善することで、組換え体ダイニン重鎖の分解が起こらない精製法を確立した。精製された組換え体ダイニンの電子顕微鏡観察を行ったところ、野生型と同様に複合体となっていることが判明し、導入したHisタグに対してNi-NTA金ナノ粒子の標識にも成功した。また、hsGFPタグを外腕ダイニン軽鎖LC1に付加し、SBP-tagでの外腕ダイニン複合体の精製が可能であることを確認した。LC1についても導入したHisタグに対してNi-NTAナノ金粒子標識を試したところ、ダイニン複合体のストーク上に結合するという結果が得られ、頭部ドメインに結合すると考えられていたこれまでの推定モデルを修正するものとなった。
2: おおむね順調に進展している
研究計画で掲げていた、①テトラヒメナにおける繊毛タンパク質組換え体の発現、を達成することができた。②IFT粒子の単離とターゲットタンパク質の位置の同定、についてはダイニン重鎖とダイニン軽鎖の研究が進展したために、時間的に進めることができなかった。ダイニン重鎖の組換え体作成とその精製に成功したことと、ダイニン軽鎖(LC1)の組換え体においても外腕複合体として精製することができたこと、さらにLC1がダイニンストーク上に存在することを明らかにできたことは、意義が大きい。
平成25年度に、テトラヒメナ形質転換体作製・組換え体ダイニン重鎖の精製系が確立できたので、平成26年度は、ダイニン2重鎖についても発現・精製を行い、in vitroでの性質を明らかとする。また、細胞内で協働して働くタンパク質も共精製することを目指す。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (14件) (うち招待講演 3件)
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