公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
本研究課題では、シリア・中心体形成に関与するキナーゼと極性形成に関与するキナーゼについて、リン酸化プロテオミクスを基盤とした基質のスクリーニングとその機能解析を行うことで、下流のリン酸化シグナルの解析を行い、シリア・中心体系と細胞極性シグナルの間にどのようなリン酸化シグナルフローが関わり、細胞の非対称化を担保しているのか、その分子基盤を明らかにすることを目指している。平成25年度には、申請者らが開発した新規のリン酸化基質スクリーニング法を用いて、シリア・中心体形成に関与するキナーゼ(Cdk-related kinase, MAP-kinaseなど)や極性形成に関与するキナーゼ(aPKC, Akt, GSK3beta など)について基質のスクリーニングを行った。その結果、Cdk5について約190個、MAPK1について約120個、aPKCについて約40個、Aktについて約100個、GSK3betaについて約200個の既知の基質蛋白質と基質候補蛋白質を得た。スクリーニングで得られた基質候補蛋白質のパスウェイ解析を行ったところ、細胞極性に関連する蛋白質群が得られた一方で、シリア・中心体の構成・制御蛋白質は少数であった。これは、シリア・中心体の構成・制御蛋白質の細胞内含量が微量であるためと考えられ、今後は分画や濃縮法を検討する必要がある。また、上記のキナーゼ阻害剤処理や、シリア・中心体制御蛋白質の機能抑制・変異体発現等の条件下におけるリン酸化の変動を解析するために、リン酸化モチーフ結合ドメインを用いたリン酸化蛋白質の濃縮法の検討を行った。従来の研究から14-3-3蛋白質が効率良くリン酸化蛋白質を濃縮出来ることを見出していたが、これに加えて、WWドメインやFHAドメインが、14-3-3とは異なるリン酸化蛋白質群を濃縮出来ることを見出した。
2: おおむね順調に進展している
本研究ではシリア・中心体形成に関与するキナーゼと極性形成に関与するキナーゼの下流のリン酸化シグナルネットワークを明らかにすることを目指しており、平成25年度には関連するキナーゼの基質スクリーニングを行った。その結果、スクリーニングはおおむね順調に進み、多数の基質候補蛋白質を得ることが出来た。また、上記のキナーゼの阻害剤処理や、シリア・中心体制御蛋白質の機能抑制・変異体発現等の条件下においてどのような蛋白質のリン酸化が影響を受けるか、リン酸化ダイナミクスの解析に着手した。シリア・中心体構成・制御蛋白質の細胞内含量は微量であるためリン酸化蛋白質の濃縮が重要であり、濃縮法の検討を行った。その結果、予備的ではあるが、従来用いていた14-3-3蛋白質に比べて、Pin1のWWドメインやCHEK2のFHAドメインがシリア・中心体の構成蛋白質を効率よく濃縮出来ることを見出した。一方で、14-3-3は細胞極性関連蛋白質を効率良く濃縮することが出来た。これらのツールを用いることで、シリア・中心体系と細胞極性シグナルの間にどのようなリン酸化シグナルフローが関わり、細胞の非対称化を担保しているのか、そのメカニズムの解析が可能になると期待される。
平成25年度に得られた基質候補蛋白質について、細胞極性とシリア・中心体形成に関連すると思われるものを絞り込み、機能解析を行う。また、引き続きシリア・中心体形成や極性形成に関与するキナーゼの基質のスクリーニングも行う。Mark1などいくつかのキナーゼについては少数の基質候補しか得られなかったため、今後スクリーニング条件の最適化を試みる。また上述のように、リン酸化蛋白質を効率良く濃縮することが可能となってきたため、今後は特定の蛋白質(阻害剤、機能抑制、変異体発現等を使用)と細胞機能・形態、そして細胞内リン酸化シグナルネットワークを紐付ける形で、シリア・中心体系と細胞極性シグナルの間の分子基盤の解析を試みる。
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