研究領域 | シリア・中心体系による生体情報フローの制御 |
研究課題/領域番号 |
25113518
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
西田 宏記 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60192689)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ホヤ / 左右非対称 / nodal / シリア / 神経胚回転 / H+K+ポンプ / 卵膜 |
研究概要 |
ホヤは神経胚期に胚表全体の表皮細胞から一本ずつ生えている繊毛により、胚全体が囲卵腔の中でゆっくり反時計回りに回転する。この回転は、必ず胚の左を下にして停止する。また、回転停止後、胚の左側と卵膜の接触により、左側でのNodalの発現が誘導されるという、左右非対称を作り出す新しいメカニズムに関して研究を行った。 本年度は、卵膜から発せられて、表皮にNodalの発現を引き起こすシグナル分子が何であるのかを特定するために、卵膜の可溶化条件を検討した。不溶性の卵膜の可溶化は予想したよりも困難であり、界面活性剤、SH化剤、酸海水、ホモジナイズ、超音波処理等を用いた。現在でも、完全な可溶化には成功しておらず、さらなる条件検討を進めているところである。 また、H+K+ポンプの阻害剤が、ホヤの左右性を乱すことがわかっているが、左右非対称形成におけるH+K+ポンプの役割を、詳細に解析した。阻害剤の濃度を至適化し、感受性期を決定した。感受性期は神経胚期にあることがわかった。このときに神経胚の回転を観察したところ、回転が阻害されていることがわかった。現在、繊毛の傾きを走査型電子顕微鏡で観察しており、繊毛が生える方向に異常が生じているかを検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
卵膜にある因子の特定、H+K+ポンプの阻害の影響について研究が進展した。H+K+ポンプの阻害の影響についての解析は順調に進んでいるが、卵膜にある因子の特定に関しては、卵膜の可溶化が予想したよりも困難であることがわかり、研究の進展がやや遅れている。今後、可溶化条件をさらに検討し、因子の特定につなげたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後、卵膜の可溶化条件についてさらに検討を行う。また、3つめのテーマ、すなわち、ホヤの神経胚の表皮から生えているモノシリアが、実際に動いているのか。動いているとしたら、どのような動き(ビート?回転?)をしているのかを解析する。ホヤの胚は半透明で比較的大きいので、そのままでは表皮に生えている非常に短いモノシリアは見えない。我々は、高速度ビデオで胚表を撮影したムービーを、動きを検出する画像処理によって解析したが、繊毛の存在自体を光学顕微鏡で観察することには成功していない。よって、全胚での観察はあきらめ、胚細胞を解離し、単細胞(もしくは表皮の小さいシート)にしてから高解像度・高倍率で観察を行う。ビデオ撮影も行い繊毛の動きを記録する。また、繊毛を蛍光で光らせて観察を行うことが必要になるかも知れない。そのためには、細胞膜の蛍光染色、それでもダメなら、繊毛に輸送されるタンパクのGFP fusion proteinを発現させることが考えられる。我々は、既に繊毛に輸送されるタンパク (IFT等) のホヤのホモログをいくつか同定している。これに加え、繊毛の断面における微小管の配置を透過型電子顕微鏡を用いて観察することを予定している。
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