公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
哺乳類心筋細胞は胎生期に活発に増殖し、心臓の形態形成に寄与するが、生後、その増殖を停止し、二度と増殖しない。また、多くの哺乳類では、この不可逆的な増殖停止の直前に、多数の単核の心筋細胞が二核細胞(細胞質分裂が起こらない)になり増殖停止し、残りの細胞も単核のまま増殖停止する。本研究は、心筋細胞が最終的に単核細胞、二核細胞になる運命および生後14日付近で増殖停止を起こす運命が、いつ、どのような仕組みで決定されるか、また、その仕組みと中心体制御との関連の解明を目的とする。本年度は、まず、マウス心筋細胞の生後の増殖停止期の中心体の挙動を解析した。その結果、以下が観察された。1. 二核化細胞になる直前の核分裂期において紡錘体極を形成していた中心体の一部は分裂期終期になるとmidzoneに移動した。このような挙動はいくつかの細胞種で観察されており、細胞質分裂に関わるとされている。従って、このことやAurora Bの発現パターンと併せ、二核化を起こす心筋細胞でも細胞質分裂の過程の一部は進行していることが示唆された。2. 分裂期を終了した細胞では中心体構成蛋白質の一つであるγ-チューブリンの局在が通常の中心体様のパターン (1-4個の強い点状)とは異なり、より多くのシグナル(平均9個)が細胞質内に散在することが明らかとなった。さらにそのシグナル強度は発生とともに低下、最終的には検出限界以下となった。3. 一方、サイクリンD1発現誘導により核分裂後にも細胞周期に進行できるマウスで解析したところ、シグナル強度は低下しなかったが、依然、散在していた。この状態ではたとえ分裂期に進行しても正常な核分裂ができない可能性を示している。以上の結果から、中心体が生後、心筋細胞の増殖停止機構の一つとして機能する可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本研究の大きな目的である増殖停止状態への運命決定と中心体との関連について、重要な成果を得ることができた。すなわち、核分裂以降に中心体の挙動が通常の分裂細胞と異なり、細胞質に分散し、さらにその構成分子のシグナル強度が低下した。また、サイクリンD1発現誘導により核分裂後にも細胞周期に進行できるマウスでの解析により、たとえ細胞周期に再進入しても通常の中心体の局在パターンに戻ることができないことも明らかとなった。これらのことから、発生の進行に従い、中心体の動態が大きく変化をし、心筋細胞の増殖停止状態とリンクすることが明らかとなった。おそらくは、この中心体の状態は心筋細胞の不可逆的な増殖停止機構の一端として働くことが示唆される。以上の成果より、上記の区分と判断した。
上記の今年度の成果を受け、次年度は中心体の挙動と心筋細胞の増殖停止との関連をより詳細に検討したい。このために、微小管形成中心として働く中心体が核分裂後に分散してしまう影響を正常マウスやサイクリンD1発現誘導マウスで解析する。また、心臓傷害時に成体でも心筋細胞が増殖できるイモリの中心体の動態を傷害前後で検討する。これらの解析を通じて、中心体の動態と増殖停止機構、さらには心臓再生能との関連を明らかにする。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (15件) (うち招待講演 5件) 備考 (2件)
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