研究領域 | シリア・中心体系による生体情報フローの制御 |
研究課題/領域番号 |
25113522
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
斎藤 祐見子 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (00215568)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 1次繊毛 / Gタンパク質共役型受容体 / シグナル伝達 / 摂食 / うつ不安 |
研究概要 |
G蛋白質結合型受容体(GPCR)は生物の感覚及び神経伝達物質の受容体として非常に重要な役割を果たす。光や嗅覚受容体以外のnon-chemosensory GPCRの中で神経細胞1次繊毛に発現することが再現性良く報告されているGPCRはソマトスタチン受容体3 (SSTR3)、セロトニン受容体6 (5HT6)、メラニン凝集ホルモン受容体 (MCHR1)とごく少数である。様々な実験により、MCH-MCHR1系は摂食・うつ不安に関与することが示唆されている。この画期的な生理的意義を持つMCHR1が細胞膜ではなく、どのような機構で1次繊毛に局所的に発現するのか、発現位置の変化はMCHR1を介したシグナリング感受性・伝達様式にどのような転換をもたらすのか。この疑問に対し、H25年度はMCHR1を中心に1次繊毛を持つモデル系RPE1細胞を用いて行った。①膜シグナリング分子の1次繊毛への局在は厳密にコントロールされているはずである。この配列はciliary targeting signal (CST)と呼ばれている。そこで種々のMCHR1変異体を作成し、RPE1細胞へ一過性トランスフェクションを行い、受容体局在を評価した。20種類以上の置換体を用いた実験により、CSTはC末には存在せず、細胞内第3ループAPASQの中心のAlaをGlyに置換した場合に有意に受容体局在が変化することを見出した。この傾向はRPE1細胞のみではなく、アストロサイト初代培養系においても確認した。②1次繊毛にMCHR1が発現した場合、通常の細胞膜に局在する場合と比べてシグナリング動作機構がどのように転換するのか様々な置換体と種々のアッセイ系を組み合わせて解析を行った。その結果、リガンド添加による受容体消失(インターナリゼーションの可能性も考えられる)に関して特徴ある時間経過を示すことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画書に記載した昨年度計画のin vitro実験についてはその70%程度を達成した。他の部分、特にSSTR3とMCHR1のヘテロダイマー形成の可能性についてもトランスフェクション効率の良いHEK293T細胞を用いた予備実験(機能実験・蛋白質発現実験)は完了している。さらに、生理的環境を変化させた場合の個体レベルの実験に進むため、凍結切片・パラフィン切片が稼動できる環境を整え、免疫組織化学染色に必要な諸技術を確立した。
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今後の研究の推進方策 |
H26年度からはリガンド添加による受容体消失の分子機構を継続して解析する。さらに、RPE1細胞1次繊毛におけるMCHR1と他のGPCR(特にSSTR3)とのヘテロダイマーまたはトリプル複合体形成の可能性を追求するとともに、MCHR1のCSTに結合するアダプター蛋白質(群)の同定を目指す。加えて、個体レベルの実験を開始する。MCHR1を特異的に認識する抗体により、パラフィン薄切片の免疫組織染色で海馬・側座核・視床下部の神経細胞1次繊毛にMCHR1が局在することが報告されている。そこで、生理的環境により1次繊毛におけるMCHR1の動態を当該抗体により解析する。具体的には、遺伝的肥満マウス(ob/ob, db/db)、遺伝的肥満ラット(Zucker)、絶食マウス及び高脂肪食長期飼育を用いることで、摂食・エネルギー代謝変動による各脳領域の1次繊毛の形態、MCHR1の発現箇所(1次繊毛から細胞膜への局在変動)、MCHR1と中心体関連蛋白質の変動を免疫組織化学にて解析する。そして摂食という生理的要因が「1次繊毛-中心体構造変換」と深く関連する可能性について検討する。
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