研究領域 | 細胞機能と分子活性の多次元蛍光生体イメージング |
研究課題/領域番号 |
25113701
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
榎木 亮介 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00528341)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 概日リズム / カルシウム / 時計遺伝子 / 視交叉上核 / 光イメージング / 生物時計 / 膜電位 / アデノ随伴ウイルス |
研究概要 |
ほ乳類の中枢時計は脳深く、視床下部の視交叉上核に存在する。視交叉上核は目から外界の明暗情報を直接受け、全身にリズム時間情報を発振し、睡眠覚醒などの様々な生理機能の約24時間の生体リズムを制御している。個々の細胞でのリズム発振機構は、時計遺伝子の転写翻訳のフィードバックモデルが想定され、近年詳細な分子機構の解析が進んでいる。しかしながら、時計遺伝子やその転写産物そのものは、神経発射活動や伝達物質放出などの細胞機能を直接調節する因子ではない為、時計遺伝子からの出力情報はカルシウムや細胞内分子がメッセンジャー分子となり、最終的な細胞出力である伝達物質放出や発射活動を制御していると考えられる。生物中枢時計の機能を理解するためには、メッセンジャー分子や細胞出力といったら種々の分子や細胞の機能を可視化する技術の確立が必須である。 私はこれまでの先行研究により、ニポウディスク型共焦点と高感度CCDカメラなどからなる蛍光観察タイムラプスシステムを構築し、さらにアデノ随伴ウイルスベクターによる神経細胞へのカルシウムセンサーの感染発現により、数百~千個個規模の神経細胞から概日カルシウムリズムを連続計測することに成功している。本年度は、時計遺伝子レポーターマウスと多色のカルシウムプローブを利用し、複数機能の同時イメージング測定を試みた。時計遺伝子とカルシウムリズムの時空間変動パターンを同時観察に成功しており、両者の機能的な関連性を示す結果を得ている。さらに時計細胞の最終出力である神経細胞の発射活動(膜電位変化)の概日リズムの可視化や、多電極アレイディッシュによる電位応答記録と蛍光・発光イメージングを併用した多種機能の同時測定も試みている。今後も計画どおりに実験を遂行し、本研究の目的である生物時計の多機能イメージング解析法を確立し、中枢時計の作動基盤を解明する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、視交叉上核を多色レポーターにより同時蛍光イメージングする実験系を確立し、複数機能(時計遺伝子とカルシウム)を長期計測することを可能とした。また遺伝子コード型の蛍光膜電位センサー(VSFP)を神経細胞に発現させる為、膜電位センサーの遺伝子を組み込んだアデノ随伴ウイルスを作成し、二波長計測(FRET計測)による定量的な膜電位変化の長期計測を試みている。また多電極ディッシュによる電位応答記録と共に、蛍光と発光イメージングによる時計遺伝子発現と概日カルシウムリズムの同時測定を行なうことで、3機能の時間空間パターンの同時計測を行なっている。このように、当初の目的である多機能イメージング解析の達成に向け、研究は着実と進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
時計遺伝子とカルシウムの多色同時蛍光イメージングから得られた実験データの詳細な解析を行なう。特に独自に確立した概日リズムパラメーターの自動マッピングにより、両者の時間空間的パターンな差異について解析する。またこれ迄に、FRET型膜電位プローブを組み込んだアデノ随伴ウイルスを作成し、既に良好な感染発現の結果を得ており、本年度も引続き連続蛍光イメージングを行うことで、細胞ネットワークレベルでの膜電位の24時間変動の可視化を試みる。
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