研究実績の概要 |
研究課題1では,2分割蛍光タンパク質の自発的再構成反応を利用したアポトーシスイメージング法の開発を行った.アポトーシス過程におけるミトコンドリアからのSmacタンパク質の放出を,2分割GFPで蛍光検出するactivatableプローブを開発し,培養細胞レベルで可視化できることを実証済みである.平成25年度は,Smac-GFPopt11およびGFPopt1-10を恒常的に発現するトランスジェニックゼブラフィッシュを作製した.プローブの発現は,genotypingおよびwestern blotにより確認した. 研究課題2では,アポトーシスに重要なミトコンドリア膜上でのBakクラスター形成を解析対象とした.Bak凝集体を超解像可視化検出するために, Bakに蛍光タンパク質mEos3を標識した遺伝子(mEos3-Bak)を凝集体プローブとして内在性Bak欠損マウス胚性繊維芽細胞(MEF Bak-/-)にレトロウイルスを用いて導入した. その後, アポトーシス刺激応答性および細胞形態が野生型MEFと同様である単一クローンを限界希釈法により単離した. 単離した凝集体プローブ発現細胞株のプローブの発現をウエスタンブロット法及び蛍光観察により確認した. 次に,functionalな凝集体の形成にはBakの活性型への構造変化が必要であることから, 活性型Bak特異的抗体を用いた免疫染色法によりBak凝集体プローブがfunctionalな凝集体を特異的に検出するかどうか検証した. その結果, プローブによるBak凝集体のシグナル(点状のmEos3蛍光)が活性型Bak特異的抗体のシグナル(抗体に標識されたAlexa647の蛍光シグナル)と完全に一致した.開発したBak凝集体プローブのfunctionalな凝集体への特異性を確認した.上記細胞をBakクラスター解析のための資料とした.
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今後の研究の推進方策 |
研究課題1では,UV照射により,発生段階のゼブラフィッシュから,死細胞が蛍光シグナルとして検出できることを検証する.蛍光性細胞の出現から消滅までの時間,個体内における空間解像度,自家蛍光に対するシグナル強度などを解析し,顕微鏡システムとしての観察条件の最適化を行う.生きたゼブラフィッシュから,死細胞を非侵襲的にイメージングできることを実証する.また,新たな分割赤色蛍光タンパク質を開発し,生物個体イメージングへの応用可能性を検討する. 研究課題2では,作成したBak-mEos3発現細胞にUVを照射してBak複合体形成を促した後, PALM法によりBak複合体とミトコンドリア外膜の超解像イメージングを行う.具体的には, 蛍光顕微鏡(全反射顕微鏡)下で405 nm光(活性化光)/488 nm光(EYFPの励起光)/561 nm光(PAmCherryの励起光)を同時に照射しつつ, 蛍光を2台のEM-CCDカメラで取得する.次に,Bak-mEos3発現MEF細胞を用いて,同様に超解像イメージングを行う.UV刺激により形成されるBakクラスター中の,Bak分子数を求める.Smac放出とBak分子数との関係を明かにする.さらに, Bakクラスターの超解像イメージング画像とミトコンドリア電子顕微鏡画像とを重ね合わせ,クラスターの局在とミトコンドリア構造体との関係について,ナノスケールで解析する.
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