研究領域 | 細胞機能と分子活性の多次元蛍光生体イメージング |
研究課題/領域番号 |
25113707
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
神谷 真子 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90596462)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 超解像イメージング / 分子内スピロ環化平衡 / 蛍光プローブ |
研究概要 |
平成25年度においては、これまでに開発したブリンキング色素に、SNAP-tag, Halo-tag等のタグ蛋白の認識部位(ベンジルグアニン、Halo-tagリガンドなど)を組み込んだ誘導体を合成し、生きた細胞における超解像イメージングを試みた。まず初めに、標的蛋白とSNAP-tagまたはHalo-tagとの融合蛋白を一過的に発現させた細胞を用意し、合成した誘導体を適用することで、細胞膜透過性があるか、標的部位のみに色素分子を局在することが可能か、どのくらいの時空間分解にてイメージング可能かを検討した。その結果、合成した誘導体は細胞膜透過性があり標的蛋白への特異的なラベル化が可能であること、またその空間分解能(フォトン数)は既存の色素と比較しても遜色ない性質を有することが示された。また開発したプローブは、チオールやGLOXなどの添加物や強い励起光照射無しに自発的にブリンキングする性質を有するため、不要な光褪色や光毒性を抑えられることが出来、フォトンバジェットを有効に使うことが出来る。この利点を利用し低い励起光でイメージングすることで、“ライブセルにおける超解像タイムラプスイメージング”を実施することに成功した。さらに、これまでのSLM(single molecule localization microscopy)では不可能であった“共焦点顕微鏡での超解像イメージング”の可能性を探るべく、apical sideの核膜孔蛋白のイメージンングを行った結果、ガラス表面から数マイクロメートル程度離れた位置にある直径100 nm程度の核膜孔の円状構造を可視化することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
分子内スピロ環化平衡を最適化することで開発した色素は、添加物や強い励起光照射無しに自発的にブリンキングする性質を有し、この特性を最大限に活用することで、従来までの色素では難しかった“超解像タイムラプスイメージング”や“共焦点顕微鏡を用いたTIRF面より深い位置での超解像イメージング”に成功した。これらの成果は当初目標としていた今年度の計画よりも大幅に進んだ成果であったため、上記の評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は上記の色素を用いた更なるアプリケーション例を増やすと同時に、これまで開発してきた色素群の中からマルチエミッターアルゴリズムへの適用が可能な色素を探索する。また適宜構造修飾を施すことで、添加物なしに自発的にブリンキングする色素のマルチカラー化を図る。このような分子の開発により、より高速かつライブセルでの超解像イメージングが多色で実現出来ると期待される。また、これまでに開発したプローブを分子基盤として、光照射により高い効率での蛍光回復を示す光活性化プローブを開発していく。開発目標とするプローブ分子は、上述の自発的にブリンキングするプローブの特性を応用することで、“光照射により効率よく強蛍光性分子に変換され、かつその後熱的に(自発的に)暗状態に戻る” という特徴を有するよう分子設計する。このような分子の開発により、光照射によりブリンキング速度を任意に制御でき、かつ暗状態に戻すための強い励起光が必要ないといった特長を有するPALMプローブおよびSTORM用プローブ両者の特長を生かしたプローブが開発可能になると考えられる。
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