公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
老人性難聴など原因不明の聴・平衡覚障害に苦しむ人々は、驚くほど多い。にもかかわらず、内耳が微細構造体 (聴・平衡毛や耳石)であることなどから、治療法開発が十分に進んでいない。本研究は、内耳研究を発展させる一手段として、内耳(聴・平衡覚)有毛細胞特異的に種々の分子をノックアウトしたマウスを用い、さらに、イメージング手法を駆使することにより、内耳疾患の新規治療法の開発に繋がるような新しい研究手法を確立しようというものである。本年度の研究において、Cdc42を内耳有毛細胞特異的にノックアウト(KO)したマウスを用いた研究を重点的に行った。Cdc42 KO聴覚有毛細胞の電子顕微鏡解析では、聴毛(不動毛)の欠落・癒合が認められた。初代蝸牛器官培養内の有毛細胞に発現させたアデノウイルスGFP-Cdc42は、聴毛を覆う形質膜と頂側に近い側壁に局在した。微絨毛(不動毛)を有するMDCK細胞を聴覚有毛細胞のモデル細胞として用いると、1) GFP-Cdc42安定発現細胞株のcyst形成条件下の培養では、GFP-Cdc42はcyst管腔に面する頂側面と頂側に近い側壁に局在し、2) Cdc42-ノックダウン(KD)安定細胞株のインサート膜上培養では、微絨毛の減少や癒合とTight junction (TJ) のマーカーであるZO1の細胞内停留が認められた。Cdc42 FRET biosensor TG miceの聴覚有毛細胞を用いた二光子蛍光顕微鏡観察では、Cdc42は、聴毛膜の先端部で強い、頂側に近い側壁で弱い活性化を示した。Cdc42-KD細胞株における細胞内シグナルに関しては、CofilinとMyosin phosphatase 1 (MYPT1) のリン酸化亢進に代表されるアクチン代謝障害と代償経路の活性化 (RhoA→ROCK→ LIMK2→Cofilin, RhoA→ROCK→MYPT1→MLC) が観察された。以上より、Cdc42 KOマウスの進行性難聴は、聴覚有毛細胞内の聴毛及びTJでのアクチン代謝障害に起因することを明らかにした。
1: 当初の計画以上に進展している
研究計画にあげたほぼすべての研究が順調に進み、満足できる結果が得られた。この結果は論文としてJ. Cell SCi誌に発表した。当初は予定していなかった他のRho family分子の働きについても、細胞接着部位や微絨毛における働きの解析を開始している。
本年度の研究により、内耳有毛細胞のモデルとしてMDCK細胞の管腔形成を伴う3D培養が有用であることを明らかにした。このモデルを用いて、他のRho familyタンパク質の微絨毛の発生・維持、さらにはtight junctionでの働きを明らかにする。このモデル系を駆使することにより、内耳有毛細胞の生理的な機能を明らかにできるだけではなく、今まで混沌としていたRho familyに属する多くの分子の特異的な機能の解明の糸口となりうる。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 11件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件)
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