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2013 年度 実績報告書

細胞伸長を制御するホウ酸によるペクチン架橋の形成

公募研究

研究領域植物細胞壁の情報処理システム
研究課題/領域番号 25114502
研究機関北海道大学

研究代表者

三輪 京子  北海道大学, 地球環境科学研究科(研究院), 准教授 (50570587)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2015-03-31
キーワード植物細胞壁 / ペクチン質多糖 / ラムノガラクツロナンII / ホウ酸 / シロイヌナズナ / 分子遺伝学 / 変異株
研究実績の概要

植物の一次細胞壁に存在するペクチン質多糖ラムノガラクツロナンII(RG-II)はホウ酸で分子間架橋されており、接着成分として細胞伸長に必須である。しかし、複雑な多糖であるRG-IIのホウ酸による架橋反応の分子機構は明らかではない。また、ホウ酸架橋されたRG-IIが情報分子として植物の成長を制御する可能性が示唆されている。
本研究では、(1)ホウ酸によるRG-IIの架橋反応に必要な生体分子の同定、(2)「RG-II架橋率の低下がホウ素欠乏を表す指標となり、積極的な応答として成長を抑制する」仮説の検証、を目的とした。
(1)では、正常な生育に高濃度のホウ酸が必要である高ホウ酸要求性シロイヌナズナ変異株の解析を行った。変異の原因遺伝子として、病原応答の負の制御因子やビタミンB6代謝に関わる酵素遺伝子が見出された。これら変異株がホウ素依存的な生育を示す報告はなく、ホウ酸が細胞壁架橋とは異なる新規の生理機能をもつ可能性を明らかにした。また、低ホウ酸条件下においてRG-IIへの優先的なホウ酸分配に働くホウ酸輸送体を同定し、RG-IIの効率的なホウ酸架橋形成を担う分子を明らかにした。
(2)では、ホウ酸欠乏下での主根伸長抑制が緩和されたホウ酸欠乏低感受性シロイヌナズナ変異株を探索・単離した。原因変異のひとつとして機能未知の複数膜貫通タンパク質の機能欠損が見出された。主根伸長抑制の緩和を示す変異株の存在は、「積極的な成長抑制応答」を支持すると考察される。さらに、同様にホウ酸欠乏下で主根伸長を示すシロイヌナズナのナチュラルアクセッションの遺伝学解析を行い、既知のホウ素栄養に関わる遺伝子座とは異なる複数の遺伝子座による形質制御を明らかにした。ホウ素欠乏土壌と予想される地域由来の株であり、局所的な無機栄養環境への新たな適応機構の解明が期待された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

「RG-II架橋率の低下が情報として体内/体外のホウ素栄養欠乏を表す指標となり、積極的に成長抑制応答を起こす」仮説の検証を目指した変異株探索では、ホウ酸欠乏条件下における主根伸長抑制の緩和を顕著に示す独立な複数の変異株の単離に成功した。ホウ酸欠乏低感受性を示す変異株の単離は初めての例である。これらの変異株の存在は「積極的な成長抑制応答」という仮説を支持するものであり、同定された原因遺伝子は成長抑制応答の正の制御因子である可能性が期待された。仮説証明に向けた植物材料の獲得に成功し、さらに原因遺伝子がこれまでに解析されていない機能未知の遺伝子であったことから、植物の新たなミネラル栄養環境応答のしくみの解明が期待された。

今後の研究の推進方策

特にホウ酸欠乏低感受性変異株を対象として生理学的および遺伝学的な解析を進め、「RG-II架橋率の低下がホウ素欠乏を表す指標となり、積極的な応答として成長を抑制する」仮説の検証を進める。単離された変異株に対しては、細胞壁合成阻害剤に対する感受性の変化を観察し、細胞壁構造異常が引き起こす成長抑制応答に対する感受性の低下の有無を検証する。また、原因遺伝子を同定後には、発現および機能解析を進める。

  • 研究成果

    (16件)

すべて 2015 2014 2013

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (14件) (うち招待講演 4件)

  • [雑誌論文] Strategies for optimization of mineral nutrient transport in plants: multi-level regulation of nutrient-dependent dynamics of root architecture and transporter activity.2014

    • 著者名/発表者名
      Aibara, I, Miwa, K.
    • 雑誌名

      Plant and Cell Physiology

      巻: 55 ページ: 2027-2036

    • DOI

      10.1093/pcp/pcu156

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Roles of BOR2, an efflux-type boron transporter, in crosslinking of rhamnogalacturonan II and root elongation under boron limitation in Arabidopsis thaliana.2013

    • 著者名/発表者名
      Miwa, K., Wakuta, S., Takada, S., Ide, K., Takano, J., Naito, S., Omori, H., Matsunaga, T., Fujiwara, T.
    • 雑誌名

      Plant Physiology

      巻: 163 ページ: 1699-1709

    • DOI

      10.1104/pp.113.225995

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] ペクチン架橋形成によるホウ素栄養環境に応答した成長制御2015

    • 著者名/発表者名
      三輪京子
    • 学会等名
      第56回日本植物生理学会年会
    • 発表場所
      東京農業大学(東京都)
    • 年月日
      2015-03-16 – 2015-03-18
    • 招待講演
  • [学会発表] ガラクツロン酸転移酵素の変異はシロイヌナズナにおいてホウ素要求量を低下させる2015

    • 著者名/発表者名
      船川寛矢、福間健、三輪京子
    • 学会等名
      第56回日本植物生理学会年会
    • 発表場所
      東京農業大学(東京都)
    • 年月日
      2015-03-16 – 2015-03-18
  • [学会発表] 低ホウ素耐性を示すシロイヌナズナナチュラルアクセッションの遺伝学的解析2015

    • 著者名/発表者名
      久野香織、佐野亮輔、倉田哲也、出村拓、千葉美恵、三輪京子
    • 学会等名
      第56回日本植物生理学会年会
    • 発表場所
      東京農業大学(東京都)
    • 年月日
      2015-03-16 – 2015-03-18
  • [学会発表] A novel strategy to identify a gene to increase nutrient use efficiency in Arabidopsis thaliana.2014

    • 著者名/発表者名
      Miwa, K.
    • 学会等名
      XII France-Japan Workshop on Plant Science 2014
    • 発表場所
      東京大学(東京都)
    • 年月日
      2014-10-27 – 2014-10-29
    • 招待講演
  • [学会発表] A novel strategy to identify a gene to regulate nutrient requirement in plants.2014

    • 著者名/発表者名
      Fukuma, K., Fujiwara, T., Miwa, K.
    • 学会等名
      The 38th Naito Conference, Molecule-based biological systems
    • 発表場所
      シャトレーゼガトーキングダムサッポロ(北海道・札幌市)
    • 年月日
      2014-10-07 – 2014-10-10
  • [学会発表] ガラクツロン酸転移酵素10への変異は植物の成長に必要なホウ素量を低下させる2014

    • 著者名/発表者名
      船川寛矢、福間健、三輪京子
    • 学会等名
      新学術領域「植物細胞壁機能」第3回若手ワークショップ、第8回細胞壁ネットワーク研究会
    • 発表場所
      阿蘇プラザホテル(熊本県・阿蘇市)
    • 年月日
      2014-09-24 – 2014-09-26
  • [学会発表] ホウ素欠乏条件における主根伸長抑制が緩和されたシロイヌナズナ変異株の解析~「植物の栄養欠乏に対する積極的な成長抑制」の仮説の検証~2014

    • 著者名/発表者名
      廣口覚彦、三輪京子
    • 学会等名
      新学術領域「植物細胞壁機能」第3回若手ワークショップ、第8回細胞壁ネットワーク研究会
    • 発表場所
      阿蘇プラザホテル(熊本県・阿蘇市)
    • 年月日
      2014-09-24 – 2014-09-26
  • [学会発表] 活性型ビタミンB6合成酵素の変異株の生育抑制は高濃度のホウ酸により回復する2014

    • 著者名/発表者名
      相原いづみ、三輪京子
    • 学会等名
      日本土壌肥料学会2014年度東京大会
    • 発表場所
      東京農工大学(東京都・小金井市)
    • 年月日
      2014-09-09 – 2014-09-11
  • [学会発表] Identification of a novel gene to determine boron requirement for pectin.2014

    • 著者名/発表者名
      Fukuma, K., Fujiwara, T., Miwa, K.
    • 学会等名
      5th International Conference on Plant Cell Wall Biology (PCWB2014)
    • 発表場所
      パームコーブ(オーストラリア)
    • 年月日
      2014-07-27 – 2014-07-31
  • [学会発表] ホウ酸架橋されたペクチンによるホウ素栄養応答2014

    • 著者名/発表者名
      三輪京子
    • 学会等名
      第55回日本植物生理学会年会
    • 発表場所
      富山大学(富山県・富山市)
    • 年月日
      2014-03-18 – 2014-03-20
    • 招待講演
  • [学会発表] ホウ素の恒常性におけるホウ酸輸送体BOR1の転写後制御の役割2013

    • 著者名/発表者名
      相原いづみ、三輪京子
    • 学会等名
      新学術領域「植物細胞壁機能」第2回若手ワークショップ、第7回細胞壁ネットワーク研究会
    • 発表場所
      つくばグランドホテル(茨城県・つくば市)
    • 年月日
      2013-11-13 – 2013-11-15
  • [学会発表] ガラクツロン酸転移酵素変異によるホウ素欠乏条件における生育改善2013

    • 著者名/発表者名
      福間健、三輪京子
    • 学会等名
      新学術領域「植物細胞壁機能」第2回若手ワークショップ、第7回細胞壁ネットワーク研究会
    • 発表場所
      つくばグランドホテル(茨城県・つくば市)
    • 年月日
      2013-11-13 – 2013-11-15
  • [学会発表] ラムノガラクツロナンII合成に関与する新規分子の同定を目指したシロイヌナズナ高ホウ素要求性株の解析2013

    • 著者名/発表者名
      船川寛矢、三輪京子
    • 学会等名
      新学術領域「植物細胞壁機能」第2回若手ワークショップ、第7回細胞壁ネットワーク研究会
    • 発表場所
      つくばグランドホテル(茨城県・つくば市)
    • 年月日
      2013-11-13 – 2013-11-15
  • [学会発表] Formation of pectic networks by borate - identification of novel genes to regulate boron demand and supply for plant cell walls.2013

    • 著者名/発表者名
      Miwa, K.
    • 学会等名
      International Symposium on Cell Wall Integrity
    • 発表場所
      東京大学(東京都)
    • 年月日
      2013-10-30
    • 招待講演

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公開日: 2016-06-01  

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