研究領域 | 植物細胞壁の情報処理システム |
研究課題/領域番号 |
25114511
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
打田 直行 名古屋大学, トランスフォーマティブ生命分子研究所, 准教授 (40467692)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | シロイヌナズナ / リガンド / 受容体 |
研究概要 |
高等植物の細胞間コミュニケーションでは、「細胞外に分泌されるリガンドが受容体によって受容される」制御が重要だが、数多くのシグナル情報を秩序立てて処理する仕組みの解明は遅れている。本研究では、様々な形態制御に関わる受容体ファミリー、ERECTA(ER)ファミリーに着目する。ERファミリーのリガンドはこれまでに5つが同定され、全てEPFL分泌ペプチドファミリーに属す。このファミリーにはさらに6つの機能未知因子が含まれ、ERファミリーに作用しうる。そこでEPFL・ERファミリーの各メンバーが未知の制御でもリガンド・受容体ペアとして働く可能性を追求する。また、各々のリガンドは別の現象のために分泌され混在し、どのリガンドがどの現象を制御すべきか受容体には区別できない事態に見えるが、受容体はそれぞれのリガンド刺激に応じた現象の制御を区別して行う。そこで、この仕組みに関わる新たな知見の獲得も目指している。 今年度はまず、EPFLファミリーのうちのEPFL4とEPFL6が、ERファミリーに属するERとERL1とリガンド・受容体ペアとなって、茎の維管束前形成層の維持において重要な役割を果たすことを明らかとした。このとき、内皮から分泌されたEPFL4/6、ER/ERL1を、篩部で働くER/ERL1が受容する仕組みが機能していた。また、ERファミリーが関わる未知の形態制御を探索した結果、ERファミリーが葉の鋸歯の成長制御で役割を持つことを見出し、その際に働くリガンドとして、EPFLファミリーの中でも機能が未知であった因子が働いていることも見出した。さらに、ERファミリーが植物胚軸の二次成長に置ける肥大成長に関わることも見出した。この際には、ERファミリーは細胞の増殖と分化の両方に影響を与えることを明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度に行うことを予定していた研究計画のうちの大部分はおおむね完了した。また、成果としては、2報の英語文献、2報の日本語文献を発表することも出来た。
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今後の研究の推進方策 |
まず、今年度に明らかとした、葉の鋸歯の成長に関わるリガンド・受容体ペアに関しては、リガンド・受容体のそれぞれがどの特定の部位で働くことが鋸歯の成長にとって重要であるのかを、部位特異的プロモーターを活用することで解析していく。このためのコンストラクトと形質転換植物体の作成準備は進行している。また、鋸歯の成長には植物ホルモンであるオーキシンが関わることが知られているので、オーキシンによる反応をモニターするための植物体の手配も滞り無く進んでいる。さらに、ERファミリーによる胚軸の二次成長の制御に関しては、これまでに報告のある二次成長の制御経路とERファミリー経路との関わりを解析することで、新たな突破口を開拓する予定である。既知の制御経路としては、各種のCLE型ペプチドホルモンと低分子植物ホルモンによる経路を想定しており、それらの効果を我々の実験系で解析可能であることはすでに確認済みであるので、順調に解析を進めていけると考えている。 また、以前にERファミリーが植物地上部の幹細胞の維持に重要な役割を果たすことを報告したが、この際に働くリガンドに関しても、その候補が絞られつつあるので、その検証を進めることで、本研究課題で扱う「生理機能が異なる複数のリガンド群が同じ受容体を介して異なる発生現象を秩序立てて制御する」仕組みに関しての理解の幅をさらに広げることが可能になると期待している。
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