公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
植物AURは、紡錘体や細胞板に局在するα型と動原体に局在するβ型に分けることができる。α型のシロイヌナズナAURであるAtAUR1/2が細胞質分裂に関与することから、細胞質分裂の最終過程である細胞壁構築を植物のα型AURが制御する可能性が高い。そこで本研究課題は、細胞壁構築におけるAURによるリン酸化情報処理システムを明らかにすることを目的とした。1. AUR自己リン酸化モノクローナル抗体の作成構造予測とAURのキナーゼアッセイの結果からα型AURの自己リン酸化部位はAtAUR1:T185、 AtAUR2:T173と予想された。そこでリン酸化修飾ペプチドを中央にして周囲5アミノ酸からなる11残基のペプチドを合成した。抗体の特異性評価のために、リン酸化ペプチドと非リン酸化ペプチドの二つを作製した。HPLC精製後、マウスに免疫しハイブリドーマを得た。ハイブリドーマ上清から、分子間相互作用検出装置Biacoreにより計測したKd値を基に、非リン酸化ペプチドには結合せず、リン酸化ペプチドに結合するもっとも特異性の高い抗体を選抜した。リガンドチオールカップリングでセンサーチップにペプチドを固定し、ハイブリドーマ上清を流路に流し、結合と解離をBiacore解析した。2. AURのリン酸化プロテオーム解析とキナーゼアッセイAUR変異体の細胞抽出液を用いて、フーリエ変換リニアイオントラップによるハイブリッド質量分析計LTQ Orbitrap XLで分析しリン酸化ペプチドを同定した。放射性同位元素32Pを使用せず、ATPγSにより形成されるチオリン酸エステルを抗体で検出するNon-RIキナーゼアッセイにより、リン酸化修飾されるセリン/スレオニン残基を特定した。
1: 当初の計画以上に進展している
AURのリン酸化プロテオーム解析とキナーゼアッセイ解析により多数の基質が同定された上に、転写因子のアルファスクリーニング解析によっても多数の基質が同定された。その中の因子はリン酸化アッセイにより実際に基質となっていることを確認した上に、具体的にリン酸化されるアミノ酸部位まで同定できた。これは細胞壁構築メカニズムを知る上で、当初の計画以上に進展している研究成果と言える。
前年度、同定した基質と相互作用因子を蛍光タンパク質に連結してイメージングラインを作製する。このラインをライブイメージングで解析すると共に、タンパク質動態をFRAP解析する。FRAP解析にはAURリン酸化部位をアラニンに置換した非リン酸化変異体や、アスパラギン酸に置換したリン酸化ミミック変異体も作成し解析する。さらに、新学術領域の計画班と連携を続け、細胞壁構築におけるオーロラキナーゼのリン酸化ネットワークの解明を目指す。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (1件)
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