公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
キチン受容体CERK1を介した細胞壁における防御機構であるカロース蓄積に着目し、その制御機構解明を目指して検討を進めた。シロイヌナズナ幼植物体におけるエリシター処理とカロース定量の条件を設定し、種々の変異体を用いた解析から、CERK1直下で作用する細胞質型受容体様キナーゼPBL27がキチン応答性のカロース蓄積制御で重要な役割を果たしていることを明らかにした。一方、PBL27は細菌鞭毛由来のペプチドであるflg22応答には関与しないこと、また、キチン応答でも活性酸素生成には関わらないという特性をもつことも明らかにした。また、MAPキナーゼカスケード変異体を利用した解析から、キチン誘導性のカロース蓄積がMAPキナーゼであるMPK3/6によって制御されていることを示す結果を得た。一方、細胞表層・アポプラストにおける防御応答でユニークな機能が想定されるGPIアンカー型分子であるAtCEBiP(LYM2)の抵抗性応答への寄与を調べたところ、AtCEBiPはイネCEBiP同様に、極めて特異的にキチンオリゴ糖に結合するにもかかわらず、キチン誘導性の活性酸素生成や防御応答関連遺伝子の発現誘導には関わっていないことが明らかになった。一方、AtCEBiPの病害抵抗性への関与を調べるため、AtCEBiPノックアウト変異体を用いてA. brassicicolaによる感染実験を行ったところ、本変異体では抵抗性が有意に低下していることが見いだされた。このことは、AtCEBiPが通常のキチンシグナル伝達とは別の形で病害抵抗性に寄与していることを示唆するものであり、今後の研究に新しい視野をもたらすものと考えられる。
2: おおむね順調に進展している
細胞壁における典型的な防御応答であるカロース合成・蓄積に関して、キチン受容体を介した誘導機構についての重要な知見が得られている。また、細胞壁・アポプラストにおける防御応答での機能が想定されるGPIアンカー型キチン結合タンパク質AtCEBIPがユニークな形で抵抗性に寄与することを示唆する結果を得ている。
基本的に当初計画に基づいて研究を推進する。次年度においては、キチン受容体下流でカロース蓄積制御に関わるシグナル伝達機構の解明を中心に検討を進める。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (16件) (うち招待講演 3件)
Proc. Natl. Acad. Sci. USA.
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10.1073/pnas
Plant Signal. Behav.
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