公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
植物細胞の特徴のひとつに、柔軟な分化や増殖の制御が挙げられる。しかしながら、植物細胞の特徴的な構造体である細胞壁が、この柔軟な制御にどのように関わっているのかはまだよく分かっていない。そこで細胞壁とその構造変化が脱分化進行時に果たす役割を明らかにするため、昨年度は以下の解析を行った。1. シロイヌナズナ胚軸脱分化過程で発現変動する細胞壁関連因子の逆遺伝学的解析これまでに細胞増殖の再開に先立って発現が上昇あるいは減少する細胞壁関連因子として19の候補遺伝子を同定してきた。これら遺伝子に関してT-DNA挿入変異体を取得し、カルス形成に関する表現型解析を行った結果、変異体の一部において高温条件下でのカルス形成遅延が認められた。これによって、細胞壁因子が細胞増殖再開に一定の役割を担っていることが示された。2. 細胞壁再構築を中心とした胚軸脱分化時の遺伝子発現制御システムの解明脱分化誘導後0~48時間目までの6時間おきの上記の細胞壁関連遺伝子の発現変動を定量的RT-PCRによって調べ、これらの遺伝子が脱分化過程進行に伴って発現上昇することを明らかにした。さらに、細胞壁関連遺伝子の発現動態に関する情報を拡充するため、脱分化誘導後0、12、24、48時間目の胚軸サンプルを用いた網羅的トランスクリプトーム解析(RNA-seq解析)を開始した。以上に加えて、時空間的な発現制御解析のため、対象遺伝子に関するプロモーターレポーターラインの整備を完了した。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り、逆遺伝学的解析によって研究対象とすべき細胞壁生合成関連遺伝子の絞り込みに成功した。発現解析用の材料準備も順調に進んでおり、さらにトランスクリプトーム解析の準備もほぼ完了したことから、おおむね順調に進展していると判断した。
計画通り、本年度はトランスクリプトームを完了させ、植物細胞の脱分化過程における細胞壁再構築に関連した網羅的な遺伝子発現動態を明らかにする予定である。さらに初年度の解析から、とくにペクチン修飾による細胞壁再構築が細胞増殖再開に重要である可能性を突き止めている。これを受けて、今後はとくにペクチン修飾動態に着目し、脱分化時のペクチン修飾の変化と関連変異体の詳細解析を進め、細胞壁再構築の実際と脱分化との関連を明らかにしたい。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件)
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