研究領域 | 植物細胞壁の情報処理システム |
研究課題/領域番号 |
25114521
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
吉田 聡子 独立行政法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 上級研究員 (20450421)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 寄生植物 / 植物免疫 / 細胞壁 / 細胞壁分解酵素 / 抵抗性 |
研究概要 |
植物は病原体を感知し、攻撃を加えることで身を守るが、病原体はその感知システムを回避あるいは遮断、または攻撃システムの破壊などを通して対抗する。植物が病原体に対して抵抗性を発揮するか、あるいは逆に感染が成立するかは、両者のインターフェイスでの情報戦によって決定する。本研究では病原体として寄生植物を用い、寄生植物が宿主植物に感染する際にインターフェイスで生じる攻防を担う分子実体の解明を目指す。 本年度は、ストライガの感染過程におけるRNASeq解析をおこない、特に寄生から7日目のステージにおいて、細胞壁分解酵素およびタンパク質分解酵素群が顕著に発現上昇することを見出した。寄生7日目にはストライガは宿主との導管の連結を成立させ、栄養の転流が始まっていると考えられる。これら分解酵素群の機能を探るために、in situ hybridization法を用いて発現部位を解析した。寄生時特異的な発現を示すタンパク質分解酵素はストライガ吸器の中のヒエリンボディと呼ばれる細胞質密度が濃く細胞外分泌物を多く産生する特殊な細胞群に特異的に発現していることが明らかになった。 さらに、ストライガがイネに寄生した際のトランスクリプトーム解析をイネ遺伝子についておこなった。ストライガ感染時には免疫を司る植物ホルモン、ジャスモン酸およびサリチル酸に応答する遺伝子群が発現上昇することが明らかになった。これらの植物ホルモンをストライガ感染前にイネに与えることにより、ストライガへの耐性を付与できるため、ジャスモン酸およびサリチル酸により誘導される抵抗性反応が寄生植物ストライガにも有効であることが示された。さらに、ジャスモン酸生合成変異体を用いて感染実験をおこなったところ、ストライガ感染率が上昇し、内生ジャスモン酸がストライガ耐性に寄与していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、病原寄生植物、宿主イネの両者でのトランスクリプトーム解析が順当に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は発見した遺伝子の機能解析をおこなうとともに、インターフェイスで機能するタンパク質の同定をおこないたい。また、細胞壁成分の解析を予定している。
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