公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
本邦では潰瘍性大腸炎患者が急増しており、それに伴う発癌患者の増大が懸念されている。炎症発癌の特徴は粘液産生癌が多いことであるが、我々は腸管上皮分化制御因子であるAtoh1の蛋白安定性が粘液産生のみならず、癌幹細胞形質・悪性形質獲得に必須であることを証明した。さらにAtoh1蛋白安定性はTNFαなどNFkBシグナルが関与することを見いだし、持続炎症状態における上皮細胞変化が発癌形質に影響すると考えた。そこで我々は世界で初めてマウス大腸上皮幹細胞の初代培養系を確立し、初代培養細胞における持続炎症刺激モデルを構築した。TNFα, Flagellinの刺激にて一過性のIL-8上昇を認めるが、4週間持続刺激によりIL-8の再上昇を認めたことから自然免疫応答がスパイラル状態にあることを発見した。そこで、本研究では初代培養における応答スパイラル機構を解明し、潰瘍性大腸炎の大腸上皮初代培養細胞によるスパイラル状態評価法を構築することで、免疫応答スパイラルの予防もしくはリセットを行い、炎症発癌の発症を抑制することを目的とする。本年度はマウス大腸初代培養細胞における長期自然免疫応答システムを構築し、さらにNFkBシグナル評価、酸化ストレス評価などの解析手法を確立した。さらに倫理審査委員会承認のもとヒト小腸・大腸上皮細胞の初代培養系も確立し、炎症性腸疾患患者からの初代培養も開始しておりヒト解析を遂行する環境を整えた。
2: おおむね順調に進展している
本年度の成果により、大腸初代培養細胞を用いた長期自然免疫応答モデルを構築でき、一部細胞の形質転換を確認できている。さらに初代培養細胞における酸化ストレス可視化技術を構築し、ストレス応答評価を可能としており、初代培養のスパイラル形質転換機構を解析できる状況へと進歩していることから、今年度の目標はおおむね達成できたと考える。
来年度は本年度の研究成果をさらに発展させ、長期自然免疫応答モデルにおける大腸初代細胞の形質転換機構およびスパイラル機構を明らかとすると共に、シグナルの非可逆性に着目し、シグナルフィードバック機構の破綻機構を明らかとする。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (12件) (うち招待講演 5件)
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