研究領域 | 感染・炎症が加速する発がんスパイラルとその遮断に向けた制がんベクトル変換 |
研究課題/領域番号 |
25114706
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西川 元也 京都大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (40273437)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 核酸 / 自然免疫 / DDS / ハイドロゲル / アジュバント |
研究概要 |
本研究では、これまでに開発した「自己ゲル化核酸」技術を基盤として、自然免疫を活性化する核酸ハイドロゲルを新たに創出する。平成25年度は、核酸ハイドロゲル構造の最適化を目的に、種々のpolypodnaを設計し、ハイドロゲルの物性に及ぼす影響について評価した。その結果、DNA濃度が等しい場合には、tetrapodnaで作製したハイドロゲルよりも、hexapodnaで作製したハイドロゲルのほうが貯蔵弾性率が高いことが明らかとなった。一方、走査型電子顕微鏡によるハイドロゲルの内部構造の観察からは、polypodnaの違いによる内部構造への影響は認められなかった。次に、免疫細胞との相互作用について評価した。マウスから単離培養した骨髄由来樹状細胞に、CpGモチーフを含むpolypodnaを添加したところ、これまでの結果と同様、pod数の増大に伴い産生されるサイトカイン量が増加する傾向が認められた。その一方で、TLR9ノックアウトマウスから調製した骨髄由来樹状細胞を用いた場合には、いずれの場合にも全くサイトカイン産生が認められなかった。このことより、polypodnaおよびpolypodnaを基本ユニットとするDNAハイドロゲルによる免疫細胞からのサイトカイン産生は、ほぼ完全にCpG DNAとTLR9との相互作用に起因することが強く示唆された。また、32P標識した各種DNAをマウス背部皮下に投与したところ、ゲル化しないpolypodna や1本鎖DNAと比較して、DNAハイドロゲルは投与部位に長期間残存し、その後徐々に所属リンパ節に移行することが示され、この体内動態と対応する時空間においてIL-6のmRNA発現の上昇が観察された。以上より、CpG DNAを含むDNAハイドロゲルは、局所において自然免疫を持続的に活性化できる優れたアジュバントである可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していた内容をほぼ予定通りに遂行した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる平成26年度は、前年度のDNA ハイドロゲルに関する検討から明らかとなった種々の最適化条件をもとに、RNA を構成成分に含む核酸ハイドロゲルを設計・開発する。TLR3/7/8 を介する免疫活性化が期待できるUCA、AUUAUU、GUUGUU 等の免疫刺激性RNA 配列を含むpolypodna を用いてハイドロゲルを構築する。ここで、一部のODN をRNA にしたDNA/RNA ハイブリッド型と全てをRNA にしたRNA ハイドロゲルを開発する。DNA ハイドロゲルと同様の方法でpolypodna 形成を確認するとともに、ハイドロゲルの物性を評価する。得られたハイドロゲルに関して、免疫細胞との相互作用、マウス投与後の体内動態、個体レベルでの免疫応答について評価する。さらに、核酸ハイドロゲルを担癌マウスに種々の経路から投与し、腫瘍サイズおよび生存日数を指標に、核酸ハイドロゲルの抗腫瘍効果を判定する。
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