研究領域 | 感染・炎症が加速する発がんスパイラルとその遮断に向けた制がんベクトル変換 |
研究課題/領域番号 |
25114711
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
岡田 誠治 熊本大学, エイズ学研究センター, 教授 (50282455)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ヒト化マウス / 悪性リンパ腫 / HIV-1 / EBウィルス / HHV-8 |
研究概要 |
本研究の目的は、ヒト化マウスを用いてエイズ関連悪性リンパ腫発症のマウスモデルを作成し、その発症機序の解明と予防法・治療法の開発に供することである。エイズ関連悪性リンパ腫は、EBVまたはHHV-8感染によるものが多いため、ヒト化マウスにEBV, HHV-8及びHIV-1を感染させることにより、ウイルス感染による悪性リンパ腫の発症モデルを樹立する。 平成25年度は、以下研究を遂行した。 1.原発性滲出性悪性リンパ腫(Primary effusion lymphoma;PEL) 生存におけるIL-6とVEGFの役割:PEL細胞が、IL-6受容体とVEGF受容体を発現しており、またIL-6とVEGFを産生することが判明した。抗IL-6受容体抗体及び抗VEGF抗体は、in vitroではPEL細胞の増殖を阻害しなかったが、PELマウスモデルでは、腫瘍性腹水の産生を強く阻害した。IL-6とVEGFを介したシグナルは、PELの増殖には関与しないが、腫瘍性腹水の産生に強く関与している事が判明した。 2.原発性滲出性悪性リンパ腫(Primary effusion lymphoma;PEL) 生存におけるSIRPalpha-CD47シグナルの重要性の検討:マクロファージは、SIRPalpha-により標的細胞のCD47を認識し、"Don't eat me" シグナルにより貪食を抑える。PEL細胞ではCD47が高発現していることを確認した。PEL細胞とマクロファージの共培養系に抗CD47抗体を添加したところ、マクロファージによる貪食の増加を確認した。また、PELマウスモデルに抗CD47抗体を100μg/マウス週3回腹腔内投与したところ、腫瘍性腹水の大幅な減少が認められた。これらの結果から、PELに対する抗CD47抗体の有効性が期待できる(Eur J Cancer in press)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PELマウスモデルと培養系を用いて、PELによる腫瘍性腹水の産生にIL-6とVEGFが強く関わっている事、マクロファージによる貪食からの逃避にCD47が関与している事を示すなど、一定の成果を得た。EBV感染とc-myc発現によるリンパ腫発症モデルに関しては、基礎実験を行っているが、まだモデルの樹立には至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト化マウスへのEBV感染とc-myc強制発現によるリンパ腫発症モデルを樹立する。また、ヒト化マウスへのHHV-8感染系によるリンパ腫発症モデルの樹立を試みる。これらの系にHIV-1を感染させることにより、エイズリンパ腫発症モデルを作成する。
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