公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
フィロウイルス科に属するエボラおよびマールブルグウイルスはヒトを含む霊長類に重篤な出血熱をひきおこす病原体として知られている。現在のところ、マールブルグウイルス属は一種のみが知られているのに対し、エボラウイルス属は5種に分けられている。近年、エボラウイルスがフィリピンと中国のブタから検出され、またマールブルグウイルスが食果コウモリから分離されるなど、霊長類以外の動物におけるフィロウイルスの感染が次々に確認されている。さらに、ヨーロッパのコウモリから新種のフィロウイルスが見つかった。しかし、人獣共通感染症病原体であるフィロウイルスの宿主特異性あるいは宿主域を決定する分子基盤に関する知見は殆どない。本研究では、ウイルスのtropism決定の第一因子である細胞侵入過程(吸着・膜融合)に着目し、フィロウイルスの宿主域決定メカニズムに関する基礎的知見を得ることを目的とする。(1)ウイルス表面糖蛋白質GPを持つシュードタイプウイルスの感染性を様々な動物種由来の培養細胞で比較した結果、コウモリから検出されたウイルスは特定のコウモリ由来の細胞に高い指向性を示す一方で、霊長動物を含む多くの哺乳動物細胞に感染する可能性が明らかとなった。(2)フィロウイルスの細胞侵入に関わる宿主因子であるTIM-1をサル由来の複数の培養細胞からクローニングし、293T細胞に発現させ、シュードタイプウイルスの感染性を比較した結果、TIM-1の多形がフィロウイルスに対する細胞の感受性に影響を与えることが分かった。
2: おおむね順調に進展している
コウモリから分離されたフィロウイルスの細胞指向性の解析、細胞侵入メカニズムおよびフィロウイルス細胞侵入過程におけるTIM-1の役割とその多形性による感染性への影響の解明等、当初予定されていた計画が順調に進んでいるから。
コウモリのみから検出されている新種のフィロウイルスが、これまでに霊長類の細胞を用いて同定されているレセプターあるいは宿主プロテアーゼを利用するか否かを明らかにする。また、それら既知のレセプター分子の多形性を解析するとともに、相同遺伝子を霊長類以外の細胞からクローニングしウイルス非感受性細胞に発現させて感染効率を解析することによって、宿主域・宿主特異性決定への関与を推測する。さらに、 expression cloning法によって、新規受容体分子ならびに宿主域・宿主特異性に関与する宿主蛋白質の同定を霊長類以外の細胞を用いて試みる。今後さらに、感染の第一ステップであり、ウイルスのtropism決定の第一因子であるウイルス表面糖蛋白質(GP)と宿主細胞レセプター分子の相互作用に着目し、フィロウイルスの細胞侵入メカニズムの解明とともに宿主特異性・宿主域決定に関与する細胞側因子の同定を目指す。
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 3件)
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