公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
ヒトのAPOBEC3Gタンパク質(A3G)は、HIVのマイナス鎖DNAに作用し、シトシン塩基を脱アミノ化してウラシル塩基に変換する。これによってHIVの遺伝情報は破壊され、A3Gは抗HIV活性を発揮する。CCC配列の3番目のシトシン塩基が脱アミノ化反応の標的となるが、CCC配列が5’端近くに位置するほど脱アミノ化反応が早く進行する事を、NMRシグナルを用いたリアルタイムモニタリング法によって見出した。A3GのDNAへの非特異的な結合とDNA上におけるA3Gのスライディングを考慮したカイネティックモデルを構築し、実験結果を解析した。その結果、A3Gの脱アミノ化反応の触媒活性は、A3GがDNA上を上流に向かってスライディングしながらCCCに到達した際の方が、下流に向かってスライディングしながらCCCに到達した際より大きい事が分かった。5’端に近いCCCほど、その下流に結合したA3Gが上流に向かってスライディングしながら当該箇所に到達する確率が高くなるが、その際に触媒活性に上記のような大小関係があると、5’端に近いCCCほど脱アミノ化が早く生じる事になる。HIVのVifタンパク質は、A3Gに結合しこれを不活化する。我々はヒートショックタンパク質70(Hsp70)がVifと相互作用する事で、A3Gの抗HIV活性を復活させる事を見出した。そこでHsp70とVifの相互作用様式を構造学的に解析して、A3Gの抗HIV活性復活のメカニズムを明らかにする事を目指している。Vifは単体では難溶性で不安定であるが、CBFβ、EloB、EloC及びCul5の各タンパク質と5者複合体を形成する事で可溶化し、安定に存在する事が分かっている。Vifを含めた合計5つのタンパク質の発現系を構築し、これらを共発現する事で構造解析に供するVifを得る事とした。これまでに複数のタンパク質に関して発現系を構築した。
2: おおむね順調に進展している
NMR法を用いたリアルタイムモニタリングに関し、測定データを適切なカイネティックモデルを用いて解析する事を完了し、APOBEC3Gの動作メカニズムに関する知見を得る事に成功した。またVifとAPOBEC3Gの相互作用の解析に関し、タンパク質発現系の構築が予定通りに進行している。
Vifの安定化に必要とされている各種タンパク質の発現・精製を行い、これらのタンパク質の補助により、VifとAPOBEC3Gの相互作用を解析する。またHsp70タンパク質によって、この相互作用を分断する事の可否を検証する。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
Angew. Chem. Int. Ed.
巻: 53 ページ: 2349-2352
10.1002/anie.201309940
http://www.iae.kyoto-u.ac.jp/bio/