公募研究
A型インフルエンザウイルスのゲノム中にコードされているPB1遺伝子は、RNAポリメラーゼの一部を翻訳産物として既定するが、その読み枠ずれにより生じる新規ポリペプチド(PB1-F2)も、様々な亜型インフルエンザウイルスで同時に翻訳されることが知られている。PB1-F2はウイルス増殖には必須因子ではないが、宿主細胞のミトコンドリアと親和性を有する報告がなされている。そこで当該年度は、A型インフルエンザウイルス感染細胞を用いて、生化学的及び細胞生物学的詳細な実験から、PB1-F2のミトコンドリア局在に関する詳細な輸送機構を明らかにすることを試みた。初めに、天然のウイルス亜型間で比較的多く存在する90アミノ酸、及び57アミノ酸から成る二種類のPB1-F2の長さの違いによるミトコンドリアとの親和性に関して検証した。ヒト由来の培養細胞にそれらPB1-F2変異体を個別に発現させ、細胞分画実験によりその局在を調べた結果、90アミノ酸から成るポリペプチドは綺麗にミトコンドリアに局在していた一方で、短鎖PB1-F2ではその局在が細胞質全体に広がっていた。この様子は、免疫染色法による個別の細胞観察でも同様の結果であり、すなわちPB1-F2はその発現させるポリぺプチドの長さの違いにより細胞内局在が大きく異なることが明らかになった。そこで、PB1-F2がミトコンドリア内に蓄積した細胞の抗ウイルスシグナル応答を調べた。興味深いことに、ミトコンドリア局在型PB1-F2が発現した細胞の免疫応答は、非局在型タンパク質が発現しているものと比較して有意に低下していることが明らかになった。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 3件) 備考 (2件)
生化学
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