公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
[研究目的]ウイルスはその増殖過程で様々な宿主因子を利用するが、その相互作用はその宿主因子ごとあるいはステップごとに単独理解されているだけであり、相互作用の連続としてウイルス複製を理解できていない。HIV Gag蛋白はサイトゾルで合成された後、形質膜に輸送され、粒子を形成して出芽する。H25年度は、これら一連の過程を、宿主因子・機構によるGag蛋白のcargo輸送として捉え、その分子機構と生物学的特徴を解析することを目的とした。具体的には、この輸送の責任分子として同定したQc-SNARE分子によるGag蛋白輸送機構を解明し、Gag蛋白輸送における小胞輸送経路と宿主因子群の相互作用と攻防を明らかにすることを目的とした。[研究結果]①Qc-SNAREを介した細胞内トラフィックの検証:細胞内局在や細胞内輸送は共焦点顕微鏡と生細胞分子イメージングで解析した。Gag蛋白と同定したQc-SNARE分子は共局在を示しながら微小管系で高速輸送されることが判明した。②SNARE複合体とカルゴとしてGag蛋白、および、③Gag蛋白に結合する宿主因子の交換反応:Gag蛋白との相互作用は共免疫沈降で調べた。Gag蛋白は単量体のQc-SNAREと結合したが、Qa,b,c,R-SNARE四量体複合体とはほとんど結合しなかった。④Gag蛋白の膜輸送の再構成系:細胞内輸送小胞の精製を試みた。⑤Gag蛋白と宿主因子の相互作用部位の特定:Gag蛋白との相互作用は共免疫沈降とGST-pulldownで調べた。Gag蛋白のN末端側MAドメインとQc-SNARE分子のC末端側SNAREドメインがこの結合の責任領域であった。
2: おおむね順調に進展している
平成25年度の研究目標「HIV Gag蛋白の細胞内輸送を制御する分子機構の解析」では5つの研究項目(①Qc-SNAREを介した細胞内トラフィックの検証、②SNARE複合体におけるGagカルゴの解析、③Gag蛋白に結合する宿主因子の交換反応、④Gag蛋白の膜輸送の再構成系構築、⑤Gag蛋白と宿主因子の相互作用部位の解明など)を立てた。平成26年度の研究目標「HIV粒子出芽と細胞間伝播の連携に関する分子機構の解析」でも5つの研究項目(①出芽部位・②細胞間接着部位への宿主因子の動員、③出芽によるフィードバック制御、④宿主因子の発現プロファイリング、⑤粒子出芽と細胞間伝播の相関の解析など)を立てた。における実験計画のうち、しかし平成25年度に平成26年度の研究項目を2つ(②細胞間接着部位への宿主因子の動員についての解析や④宿主因子の発現プロファイリング)をスタートさせたため、平成25年度の研究項目が部分的に次年度繰越しとなった解析がある。例えば、膜輸送の再構成系などである。しかし、均してみれば概ね達成できていると思われる。
平成26年度へ繰越しとなった実験項目(②SNARE複合体におけるGagカルゴや④膜輸送の再構成系)を遂行するとともに、平成26年度の研究目標「HIV粒子出芽と細胞間伝播の連携に関する分子機構の解析」のための研究項目(5つのうち2つは着手済み)を進める。◆HIV Gag蛋白の細胞内輸送の制御分子機構Gag蛋白の膜輸送の再構成系構築を試みるとともに、SNARE複合体形成におけるGag蛋白の解析を行う。膜画分の精製と複合体/単量体の単離に遠心機を使用する。◆HIV粒子出芽と細胞間伝播の連携機構粒子出芽部位への宿主因子の動員、粒子出芽と細胞間伝播の相関を、細胞生物学的、分子生物学的に解析する。また、宿主因子の発現プロファイリングをプロテオーム解析する。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件)
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