公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
要素的な機能を持つ回路に立脚した脳の構造基盤を解明するために、以下の2点に焦点を当てて研究を遂行している。1.神経活動とシナプス形態・分子発現の関係、2.活性化神経回路網の可視化平成25年度は、新たに作出したレポーターマウスの評価と、選定されたマウスを用いた(1)3次元操作型電子顕微鏡による神経組織の観察、(2)光学顕微鏡レベルの回路の可視化について検討した。(1)では、生理学研究所の3view-SEMを用いて、mChopFR-Venusに対する免疫組織標本の観察を行い、海馬組織で50 nm厚で25ミクロン四方の連続的な電子顕微鏡像の取得が可能であることを確認した。しかし、この観察範囲ではmChopFR-Venusへの免疫陽性細胞が含まれる確率が極めて低い問題に直面し、この問題を解決、あるいは回避する方法を試行錯誤した。その結果、免疫反応をDAB発色による色素沈着により電子顕微鏡観察することが、対象構造の観察確率の向上に有効であることを突き止めた。一方、定量的な免疫反応の評価が可能な免疫金標識を用いた方法に対する対応策は現在も試行錯誤中である。(2)では、昨年報告された新規組織透明化法を併用することで、広範囲、高深度な免疫陽性神経回路網の観察が可能かどうかを評価した。透明化手法としてはCLARITY法とSeeDB法の2法を比較し、後者が透明化の安定性とその後の電子顕微鏡観察が可能性の点で優れていることを明らかにした。しかし、回路可視化の精度の点ではどちらの透明化手法を用いても2光子顕微鏡観察のみでは信頼性のある神経線維とシナプスの同定ができなかったことから、SeeDBによる大まかかな神経回路観察を行った後に、電子顕微鏡を用いたシナプスの構造情報の測定をする必要があることが確認され、現在、2光子観察―電子顕微鏡観察の順に神経回路の構造計測を行う実験系を開発中である。
2: おおむね順調に進展している
本研究課題は、(1)定量的な神経活動レベル標識の解析とシナプス形態との対応、(2)メゾ神経回路可視化に適した新規遺伝子導入マウスの導入と作製、(3)深部標識技術と神経連絡の可視化、(4)レプリカ解析による神経活動とシナプス分子発現の比較、の4つの研究計画からなり、前者2つを25年度に、後者を26年度に遂行する計画であった。しかし、計画(2)の完了に当たり、他のすべての計画が実行可能になり、(1)と(3)については25年度内に着手した。まだ(1)、(3)の実験から学術的価値のある情報を取得できていない状況ではあるが、研究計画の3/4に着手できていることから、おおむね順調に進展していると判断した。
26年度は、前年度に選定した遺伝子導入マウスの脳組織からより多くの観察を行い、高活動神経細胞のシナプス構造の特徴付けを進めてゆく。この為には25年度に確立した「SeeDBによる組織透明化―2光子顕微鏡観察-3次元操作型電子顕微鏡観察」のノウハウが活かせるので、前年度より迅速にデータの取得ができると予測している。この実験が軌道に乗り次第、最終計画である、「レプリカ解析による神経活動とシナプス分子発現の比較」を開始する。この解析により活動回路特有の分子発現プロファイルが単一シナプスレベルで明らかにする。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
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