公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
小脳は運動学習に深くかかわり、そこでのシナプス可塑性が運動学習の基盤と考えられている。それらの中で、皮質内の平行線維・プルキンエ細胞間の興奮性シナプスで起こる長期抑圧は、運動学習の基盤機構として注目され、多くの研究がなされてきた。しかし、長期抑圧阻害下で運動学習が起こる例が報告され、長期抑圧以外の小脳シナプス可塑性が運動学習に関与する可能性が示唆された。長期抑圧障害を補い得るシナプス可塑性の一つとして、プルキンエ細胞上の抑制性シナプスで起こるRebound Potentiation (RP)がある。私たち、GABA(A)受容体とGABARAP分子の結合を競合的に阻害するペプチドがRP発現を抑えることを見出し、このペプチドと蛍光タンパク質Venusを融合させたタンパク質を、プルキンエ細胞特異的に発現するトランスジェニックマウスを作製した。そして、平成25年度の研究で、このトランスジェニックマウスはRPは阻害されているが、他のシナプス機能および小脳形態には異常が認められないことを示した。また、反射性眼球運動の前庭動眼反射および視機性眼球運動の適応を、運動学習のモデルとして調べ、前庭動眼反射の適応がトランスジェニックマウスで障害されていることを見出した。これらの結果は、RPが運動学習にかかわることを示しており、2013年に論文発表した(Tanaka et al., J. Neurosci.)。RPが阻害されたトランスジェニックマウスで、前庭動眼反射の適応が障害されたが、視機性眼球運動の適応は障害されなっかたという結果は、RPの寄与が運動学習によって異なることを示唆しており、興味深い。この点は、平成26年度に探求する。
1: 当初の計画以上に進展している
私たちが作製したトランスジェニックマウスでは、抑制性シナプス可塑性が選択的に阻害されており、そのマウスが運動学習の一モデルである前庭動眼反射の適応の障害を示すことを明らかにし、論文報告することができた。
RP障害が、前庭動眼反射と視機性眼球運動の適応に異なる作用をする神経機構の探索を行う。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 4件) 備考 (2件)
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