研究概要 |
本研究では、聴覚視床‐皮質間の並列回路と回路間相互作用の解明を目的にしている。これを達成するために、まずマウスにおいて、聴覚皮質のすべての領野と視床内側膝状体腹側核との結合を調べた。光イメージングの方法を用いて、聴覚皮質の領野を同定した後に、逆行性トレーサを同定した領野の一つ、または複数に注入して調べた結果、内側膝状体腹側核から、皮質のA1野、AAF野、IAF野、AII野、UF野およびDP野のすべてに投射があることが分かった。また、2重ラベルや3重ラベルの実験により、これらの投射が基本的に互いに独立であることが示唆され、聴覚視床皮質間に並列回路が存在することを示すことができた(Takemoto et al., 2014)。 これらの並列回路が互いに独立して機能するのか、相互作用しながら機能するのかを知るために、まず皮質レベルでIAF野とAAF野との相互結合を調べた。これらの領野のマーカーがないため、イメージングで同定し、両方に異なるトレーサを注入した。注入部位は領野のマーカーとなるため、同定した領野間の結合を調べることができる。結果、IAFとAAFは互いに結合していることが明らかとなった(Wang et al., 2014. 学会発表)。 一方、視床において、皮質の異なる領野に投射する細胞の間にも相互作用の可能性が考えられる。それを調べるために、まず解剖学的に、ある皮質領野に投射する視床の細胞が視床の他の部位の細胞に軸索を伸ばすか否かを調べた。そのために、皮質の同定した領野から逆行性に視床ニューロンを標識する方法が考えられるが、軸索は十分に標識されない。そこで、IAF野にウイルス(AAV8)を用いて、視床ニューロンにmCherryとCreを逆行性に導入し、さらに視床にCre依存的にEYFPとChR2を発現させるウイルスを注入した。結果、IAFに投射するニューロンが特異的にラベルされ、その軸索はAAF野に投射ニューロンの部位と思われる部位まで伸ばしていることが示された。
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